2017/08/05//Sat.
巨樹を訪ねる 赤岩のトチ
nagano1706.jpg
K-1 / SIGMA 28mmf1.8 EX DG / FA35mmf2 / CZJ Pancolar 80mmf1.8

 南北に長い長野県のほぼ最北に当たる地域、長野市から西の山中、七二会(なにあい)という地区に、日本最大と言われるトチノキの巨樹があることを知りました。
 「赤岩のトチ」です。



 一応は長野市内、字面だけをみればアクセスが良さそうな印象を受けますが、地区は結構な山中にあります。
 のどかな集落を眺めながら、さらに奥に入っていく感じ。
 有名であるらしく、iPhoneのマップにも表示があり、カーナビよりもこちらの方が役に立ちました。
 近くまで行けば看板など案内表示もありますが、道はどんどん険しくなる。
 細い登り道を脱輪しないかハラハラしながらしばらく走り回ることになりました。

 トチノキ到着手前の細道の様子(動画)

 対向車とすれ違うことなんてもちろん不可能ですが、全く先が見えず、行った先で車が転回できないかもしれないと思うと、行こうかやめとこうか……しかし、徒歩ではかなりきつい道だったと思います。
 コンパクトカーなら道幅は心配ないですが、上り下りの険しさからは四輪駆動車が欲しい、そんな感じ。
 登り切ると、幸い2台ほど停められるスペースが作ってあり、そこからは柵に沿って斜面を下っていく散策道になります。

 しかし、その時点でもまだトチの姿は見えない。
 日本最大だというその存在感に期待しながら、これも良くはない道を下り続けます(足に自信のない方には辛いかもしれません)。
 するとある時、向かう先に、明らかに他とは異なる樹影が……あれだ!
 疑うべくもなし、すぐにわかりました。

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 第一印象は、黒い樹だ、というようなもの。
 日の当たり方にもよるでしょうが、他の樹々より明らかに密度感と重量感が高い感じが遠目にも伝わって来るのでしょう。
 圧倒的に太い幹は、複数あるようにも見えます。

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 近づいてみると、改めてその巨大さに心を打たれます。
 幹は二股に分かれていますが、杉にあるような合体木(成長過程で二本が一本になるとか)ではもちろんありません。
 このトチノキ自体、かなり急な崖に生えており、手前側と奥とでは根元のレベルが大きく異なっています。

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 二又になっているところに近づいてみる。
 間近まで近づいて観察することができます。
 張ってあるロープは、どちらかというと崖からの転落防止策のようです。

 やはり双方の幹は下方で強固に結びついており、こちらから見えない反対側で一本に合体している模様。
 危険すぎて回り込んで撮れないのが悔しいところですが、幹(根?)はさらに3、4メートル下にまで伸びて崖に食い込んでいます。
 反対側から向かって見ることができれば、驚くべき巨大な一本の樹として確認できることでしょう。

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 それにしても、凄まじい重量感、力強さ。
 崖のせいで見るこちらも立つ場所が限られ、寄ろうとすると、崖の実体がないようなところからぴょんと跳んでトチの根の上に立つしかなくなります。
 踏んだ感じもまるで建造物……いや、それ以上の頑強さを感じます。
 まるで岩山のように、少しも動じる気配がない。
 ひょっとするとこの崖も、トチのおかげで崩れずにいるのではないかとも思えてきます。
 トチは難しい字では「橡」と書きますが、まさに樹中の象のよう、というか、この巨樹のために存在する字のようだと思えてなりません。

 危なかしくなんとかアングルを考えて撮影を試みますが、その巨大さゆえ視界全てがゴツゴツした壁のような樹表で埋まってしまう……。
 強烈な存在感の一方で、威圧感や拒絶感、畏怖……要するに巨大なものへの近寄り難さをほとんど感じなかったのが不思議といえば不思議です。
 近くに来たければどんどん近くに寄って来るがいい、しかし来たところでお前に何ができるかな?
 そう、ここにいるのは、写真すら満足に撮れない自分です。
 こんなとんでもない立地で巨大に育って1300年も生きている存在に対して、いくら足掻いたところで、その一部を切り撮るのが関の山という自分が、すごくちっぽけに感じました。

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 5月はじめの気候は、トチの樹の葉の目覚めにはまだ早いのでしょう。
 頭上では広がった枝先に柔らかそうな新しい葉が出てきたばかりといった様子でした。
 こうして春ごと、1300回以上も、新しい葉を生み出してきたのですね。

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 そして帰り際。
 足元にたくさん、トチの実の殻が落ちているのに気づきました。
 間違いなく、この巨樹がもたらした山の恵みです。
 この崖で山中を見渡しながら、森の生き物が大好きな実まで提供している。
 すごく大らかで、小さき者にも優しい山の守り神なのです。

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 解説文。
 1000年以上も前から、この樹の下は百坪ほどの平地で、清水が湧き、滝となっているのを知られていた。
 1800年台の地震で崩落したが、トチと清水は残り、永らく村人の暮らしを潤した……。
 幹周12.4メートル、樹齢1300年。
 おそらくは日本最大かつ最高齢のトチノキであろうとのことです。

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 「新・日本名木100選」にも認定。
 1990年からの企画ですが、選ばれた樹の中にも、枯死したり倒壊してしまったものが少なくないようです。
 このトチの枝にも折れたところなどが見られましたが、この後もずっと長生きして、森を見守り続けて欲しいものですね。


nagano1714.jpg

「赤岩のトチ」
 長野県長野市七二会
 樹齢:1300年
 樹種:トチノキ
 樹高:20メートル
 幹周:12.4メートル
>> 2017/08/05 19:25
こんばんは。

この間見せていただいた動画はここに行く道だったんですね。
おいおい、対向車来ないか?って一緒にカーブ回りながら拝見してました(笑)

大きいトチノキ。
この実が落ちてまた森の中で育ち生き物の命も繋ぐ。
森の守り神ですね。
こっちではこの実を餅に入れたり煎餅に入れたりしていただきます。
昔から人も恵みをいただいてきたんだと思いました(^^)
>> 2017/08/05 22:57
栃餅に使われている実ってこんななの!?
チビmomoさんのコメントで気付きましたw
栃餅食べたいな、美味いんだよなぁ。
飢饉になっても非常食になるからトチノキは切っちゃいけないって人間にも優しい森の神様だわな。
>> 2017/08/06 06:48
チビmomoさん>
おはようございます。
そう、途中で「これ、行けんのかよ?」となってたあの動画の先に、このトチノキがあります(笑)。
この樹に会いに行くので勇気を出しました。

こちら、関東平野にはあまり数がないので馴染みが薄いのですけど、広葉樹こそ森の守り神だと思います。
広い葉に、強い根に、栄養のある実。
きっと、森の動物たちもすごく頼りにしてるんじゃないかと思います。
たまにそちらの地方に出かけると、物産で栃餅などを見つけ、買いたくなっちゃうんですよね。
今度買おう(笑)。
>> 2017/08/06 06:55
さかしたさん>
これが(乾燥してるので殻と書きましたけど)分厚い皮、になるのかな。
これ4枚の中に丸い実が入ってて、アク抜きしないと渋くて食べられないんですよね、確か。
我々平野民としては、栃餅は山の民の文化の入り口みたいなもんですよね(言い過ぎ?)。
物産を覗きたい。
そうですね、なんたって食い物くれるんですから。
なんて素晴らしい樹なんだろう。

>> 2017/08/07 22:06
一枚目の写真の樹皮に釘付けになりましたよ。
そこに1300年の歴史が表れていると思いました。
このトチノキまでのアプローチがアドベンチャーであるうえに、
こんなアクロバティックな場所にずっと存在しているなんて。
ほんと、このトチノキがあるからこそ崖が崩れないのでしょうね。
ただ、今まさに列島を横断している台風などの天災が心配になります。
強烈な存在感があるのに、近寄り難さがないってのは不思議な感じがしますね。
街中の巨樹ならそういうこともあるんですが、こんな山奥に隠れるようにして存在する
巨樹でそんな感覚にとらわれるのはイメージできないです。
いやぁ、様々なタイプの巨樹があるんですねぇ。
狛さんでさえ、満足に写真を撮れないと感じるだなんて。
自分も巨樹を撮るたびにますますその思いが強くなるので、少しホッとしました(笑)。
>> 2017/08/09 07:14
RYO-JIさん>
トチノキを間近で見た経験が少ないのですが……いきなり最大の樹に出会ってしまいました。
道路があるだけありがたいというところ……もしかすると、車が入れないような山の中には、まだまだこうした巨樹が生きているのではないかと思われてきますね。
ほんと、写真に撮れないのが残念なのですけども、反対側から見られたら、かなりすごいことになっていると思います。
崖を掌握している、という感じ、この樹の本当の姿はそれなんでしょうね。
ドローンがあれば……とも思ったんですが、万一崖下に墜落したら、取りに行くのは多分不可能……。

とにかくでかい樹ですが、そんな気がしたんですよね。
洞杉などはちょっとコワイという感じもあったんですが、この樹は、みなぎる生命力とともに長寿であるゆえの落ち着きがあるというか。
森の守り神としては、その風格がふさわしいように思えました。
友達になれそうな面白い樹もあれば、ちょっと畏れ多くて近づけないような樹もあります。
霊感などではなくて(そういうのももちろんアリはアリなんでしょうが)、生命の巨大さ、それまでの生の性格というか、そういうものを感じ取るのでしょうか。同じ生命体として。

道中の運転もあって、もう、テンションが上がってしまって、樹に駆け寄ったり撮りまくったりしましたが、そのテンションゆえ、RAWで撮るのを忘れてしまうという(苦笑)。
道に登ってきてから気づいて、戻って、何枚か撮り直しましたが……。










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狛です。
スナップ経由の風景写真、巨樹探訪旅、無計画な遠出の紀行文。
スバル・フォレスターが来て、調子に乗っているようです。

・巨樹探訪旅やってます。・
「巨樹を訪ねる」

・写真展(2013.2)・
「旅の、まだ途中」
(Web版が見られます)



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