2015/01/28//Wed.
茨城最北の漁港、日の終わり
hirakata1401.jpg
DP2 Merrill / 30mmf2.8

日が暮れきってしまうまでに。
終わりの地と終わりの時が定まり、ただ一路そこへと。

辿りついたここが、茨城県で最も北の海岸に位置する平潟漁港です。
眩しい西日も地平に消え去り、日の残りもあとわずか。
夜になって到着したとしたら、いったい何が見えただろう?
とにかく、薄い日の残りのあるうちに僕はここに辿り着き、僕が見たのは、そんな時間のここの風景なのです。


hirakata1402.jpg

巨大な岩山の威容に囲まれた風景が、南部茨城の、のっぺりとした灘とは全く異なっています。
この辺からごつごつし始めて、ゆくゆく三陸のような荒々しい地形に変貌していくんだろうか。

hirakata1403.jpg

「何やってんの?」
振り向くと、時代錯誤的、ついでに季節錯誤的にランニングシャツと短パンで釣り竿を持った少年が怪訝そうな顔をしています。
「写真撮ってんの」
「フウン」

風景、時間、この少年のインパクト。
さぞかし写真にすると出来過ぎなのが撮れそうですが、わかってて見送ってしまうのが自分です。
「シャッターチャンス」とか、「作品」とか、「被写体」とか……そういう写真用語の大抵が、あんまり好きじゃないんだよな……。

hirakata1404.jpg

でもまあ、訊かれてみれば、実際僕は何をやってるんだろうね?
写真?
こんなんで、写真を撮りにきたんだと言えるんだろうか?

言えないだろうな。
世間的には、がつがつ撮りにきてるくらいの方がわかりやすい写真撮りの姿だろうし、理解もしやすいでしょう。
僕みたいなのはいかにもやる気がなくて、のらりくらりとしてて、不審者っぽい。
自分がここにこうしていることについて、説明できる理由なんて特に何にもないんだ。

……まあ、でも、とにかく。
茨城の最北にはたどりついた。
ここから戻るのか、どうするのか……薄暗くなってきた車中で少し迷う眼に、道路標識が映る。
出発してどのくらい走ったもんか。
明らかに下に向かって動いた燃料計の針を見ながら、距離を計算してみる。
ここまででだいたい170キロくらい。
往復で500キロくらいを目指そうか、なんて呟いていたけど、うちから片道250キロ北上……すると、どこへ辿り着くのか、今さっき標識が明らかにした。
南相馬市だ。
そうだな……少なくとも今は、理由もなくぶらぶら行くところじゃないだろうな。


完全に夜になって、ライトを点灯。
なんとなく決めかねたまま北に向いたままのろのろ走って……トンネル一本抜け出たところが、福島県でした。
福島県を見てみるならここからが始まりなのだ……そう思うこともできそうだけども、知らない夜の街を車で走りながら写真を撮るのって、難しい。
一日走ってちょっと疲れてもいるし……そこで再び道を示すのが道路標識。

磐城湯本。
いわきゆもと。
ゆもと。
もはや行くべきは温泉しかないような気分になって、わが車はほとんど勝手にそっちの方向へ曲がったのでした。

iwaki1401.jpg

……おお、排水路から湯気が出ている。
ついでに僕自身からも。

なんとか風呂にありついたものの、ここまでがまたひと苦労でした。
よそ見してて事故ると大変だし、フィルムも撃ち切ってキリがよいので、今回の写真はもうおしまいということにしましたが、湯本とか言ってこの湯本、なかなかフロに入れてくれなかったのです。
ただでさえこぢんまりとしすぎていて、硫黄の匂いどころか、おいおいここ入ってくのかよ、というようなところを入って行かされ……何とか辿り着いた旅館では、立ち寄り湯はやってないと丁重に断られてしまうし。
あれえ。

それでもどうにかこうにか入れる風呂を教えてもらい、あんまり個性のない湯ではありましたが、一日の疲れの癒しにはなりました。
フィットのトランクにタオルを干し、暗いリアシートで横になる。
そりゃあ狭いですが、日々の車中昼休み経験の多さが物を言い、慣れたもんです。
慣れてくると反対にこの狭さがまた……うん、フィットのシートはちょっと固いよな、とか言って、差し込む水銀灯の光で、たまたまあった文庫版「ゲゲゲの鬼太郎傑作選2」を読む。

・考えようによっちゃ、車ってのは、自分の部屋ごと移動してるようなもんなんだ。
・つまり、「自分の部屋から一歩外へ出られるか」という休日の最大の敵と、常に一緒にいるようなもんなんだな。
・いつでも休めるのはいいけど、こいつは手強い……バイクなら違うのかな。
・ああまたメシを食い損ねた。
・さっきの片側3車線の誰もいない道路、怖かったな。
・でも、にんたまラーメンだけは食べないことにしよう。
・寄り道しなかったら、きっと帰り道は大したこと無い距離に感じるんだろうな。
・このまま車中泊ってのもオツじゃないかな。
・そしてまた福島の旅を始めるのだ、なんてな……。
・なんかもう眠いな、少し眠るかな……。
・……。

kashima1427.jpg

茨城は、広かった。
次はどっちに向けて行ってみようか。

>> 2015/01/28 10:04
自由に行きたいところへ、行きたいときに。

その行動力がうらやましいです。

狛さんの1日の心情の変化が伝わってきます。

少年との出会いもほほえましかったです。

今年は「脱・臆病」で行こうかな、と

おもいました。

>> 2015/01/28 20:29
僕はシャッターチャンス、被写体をがつがつ撮りたいんですが、
いざその場面に出くわすと消極的になってあきらめるパターンです(^^;)
ん〜、でもあんまりその場を引っかき回すような撮り方は控えたい。
撮ってるってその場ではあまり思われずに、でもいい感じのが撮りたい、
という矛盾したものを抱えて、また週末は島巡りです(^.^)
>> 2015/01/28 21:47
不思議と少年との邂逅は思い出としておもしろいものになるんですよね。
少女は不思議と出会うことなく。

写真をガツガツ撮るのは自分も苦手でそこを切り取ることが出来たらいいなくらいで。
大して写真撮ってないですけども。あいぽんでさっくり撮るくらいが丁度いいのかもしれないです、自分は。
>> 2015/01/28 21:54
いい旅してますね!
予定を決めずに自由に。
メシ・フロ・スイミンも臨機応変に。
そんな旅で撮る写真はもっといいもんですね!!
>> 2015/01/28 23:11
ハロー、ペンタックスを構える狛さん!
少年とのやり取りが狛さんらしくて、笑ってしまいました。
これからも旅を続けてください。

そして、私は来月から久しぶりに長旅に出ることになりそうです。
世界情勢が思わしくなく周囲の反対を押し切る形になってしまいそうですが、
何はともあれ、命を大切に世界を巡ってこようと思っています。
あ、決して中東に行くわけではありません。
インドケニアエチオピアバングラあたりです。
帰ってきたらまた旅の話を聞いてくださいね。
>> 2015/01/29 06:19
ぴよ社長さん>
おはようございます、ありがとうございます。
この仕事になってから、すっかり連休というものをとれなくなったので、以前のような連泊の旅行には行けなくなってしまったのですが……いつか行ってやるという野望は捨てずに(苦笑)。
自分の思う方向へ進むというのは、それだけでもいい刺激になりますね。
その結果失敗しても、それはそれでいい想い出になります。

僕は僕で、もっと写真らしい写真も撮ってみる(理屈はともかくとして)というのもやるべきことかなと自分で思いました。
チャレンジ、やってみなけりゃわからない、ですね(笑)。
>> 2015/01/29 06:25
snap.comさん>
おはようございます。
そうそう、そうなんですね。
その場にさざ波を立ててまで撮るような理由があるのかというね。
撮ることによって世界が少しだけ平和になるとか、そういうことがあるといいんですが……。
だから、自分もその場の一部になってしまうまで通い続けるというのは、ひとつ手段ではありますね、確かに。
あ、いつもいるカメラの人だ、くらいに同化できるといいですよね。
>> 2015/01/29 06:44
さかしたさん>
そうですね、言われてみれば、なんか共通することがありそうです。
まあ、僕の場合、少女と会話をしてるだけで結構怪しく思われそうでアレですが……。

今時はみんながみんなスマッホを持ってるので、そっちの方が自由に撮れるんじゃないかなとは思いますね。
でもやっぱり僕としては写真は写真機で撮るんですが……でかい望遠とか担いでどこでも行っちゃうおっさんとか、ああいう人、心が太いなあと思ってしまいますね。
テーマってやつでしょうか。
>> 2015/01/29 06:46
RYO-JIさん>
ありがとうございます(笑)。
大した距離でなくても、自由に動けば旅かな、とか。
メシ、をもっとちゃんと摂取しないとダメだなと思いました。
そこがだらしないんです。
くいしんぼう万歳的精神を育てていきましょう。
>> 2015/01/29 06:55
ラサさん>
ハロー、ラサさん、ありがとうございます(笑)。
冬が終わったら、またどこか走り回ってみようと思います。
山の方行くには路面凍結がこわいですからネ。

それより、またすごいフットワークで!
僕が九州回ります、みたいな感じで行ってしまうもんな、すごいなあと思います。
確かに情勢がよろしくないところもありそうですが、変な油断をしないで、無事いい旅を成し遂げてきてくださいね。
実はバングラディシュ、ちょっと惹かれます。
サイクロンですぐ水没するジメジメした国だというイメージですが(失礼)、世界の巨大船舶の何割かが解体されているという、あの泥の湾に行ってみたいな……。
でも、実際のところ、危なくなければ、一番行ってみたいのは中東なんですが……めしもうまそうだし。

とにかく、お気をつけて、楽しむためにお気をつけて!
おみやげ写真、たのしみに待ってます!
>> 2015/01/31 15:12
関東平野というくらい関東はのぺーっとした地形が広がっている印象ですが、海沿いはこうも表情豊かなものなんですね。いや、グンマやトチギみたいな北関東?南東北だろっ!てところまで行けばまた違うんでしょうけど。

運転って地味に疲労するので温泉は最高の癒しですね。
たまに寄るんですが、大抵は深夜運転するので営業してないんです…
>> 2015/01/31 20:25
あてもなくただ北へ。いいですね。
170キロを車で、と言うとけっこうな距離ですよね。
僕のとこだと西へ行くと博多まで行けそうな距離です。

海辺の岩山の景観がおもしろいなと思ったり
少年との出会いもおもしろいなと思ったり。
そしてやはり文章が上手いなぁと。
ついつい引き込まれてすらすらと全部読めちゃう文章が書けるってすごい。
>> 2015/01/31 23:56
to-fuさん>
どうもです。
確かに、群馬栃木は南東北って、言い得て妙という感じが(笑)。
というと、テメー茨城の分際で、と言われそうですが……そこはまあクロスカウンターのダブルノックアウトで。
奇岩の類いは、けっこう好きかもしれず、こういうのを目指して進んで行くというのもいいなと思いますね。
旅に目印があるといい感じです。

山には山の面白さというものがもちろんあって、特に群馬栃木は温泉に恵まれてますからね……。
茶化すどころか、いい季節になったら走ってってみたい気もあります。
それより、to-fuさんちの方はまだ雪でしょうから、運転お気をつけて!
あと鹿!


>> 2015/02/01 00:02
atushiさん>
長いのを読んでくださってありがとうございます(笑)。
ちょっとした疲れもあったんですが、それでも県一個分走っただけと考えると、茨城が無駄に広いのか、自分が弱いのか……。
飛ばすには限度があるわけだし、これ以上距離を伸ばすとすると、実際泊まるすべを考えないといけないです。

こういうのをちまちま書いていると、自分はやっぱり文章が好きなんだなと思います。
写真撮る人って、バシーっと写真一枚だけで勝負したりするじゃないですか。
ああいうの……無理みたいですね(苦笑)。








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狛です。
スナップ経由の風景写真、巨樹探訪旅、無計画な遠出の紀行文。
スバル・フォレスターが来て、調子に乗っているようです。

・巨樹探訪旅やってます。・
「巨樹を訪ねる」

・写真展(2013.2)・
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(Web版が見られます)



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