2015/05/16//Sat.
佐渡へ 峠登りきらぬ夜
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MX-1

 ああ、遥かなる日本海、佐渡島。

 我々は夜を突っ走り、そこを目指す者どもです。
 関越トンネルより射出され、ひんやりとした空気に満ちた新潟の下道に下ったのが22時。
 直江津に待つ佐渡汽船カーフェリー「あかね」の乗船受付は午前3時50分であり、それまでに到着すれば良いのですが、一睡もしないで渡航したところでまず良いことはない。
 理想を失わずとすれば、日が変わる前には現地入りを果たし、「グランド・フィット・ホテル」にチェック・インをばしたいところ。
 何、ナビの到着時刻予想はいつも正確だし、車も数えるくらいしか走ってない、ところでどうして我々はこんな山の高みに居るのです?


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 答えは地図帳に訊け。
 新潟県というのは実に東西に長く横たわっており、その真ん中はかなり山がちである。
 そういうのに雲が引っかかって、冬はものすごい雪が降り続くわけです。
 谷川連峰を突っ切ったものの、越後湯沢はまだ山の中であり、十日町、上越市という平野部へは山越えを強いられる。
 実は、狛の祖母は十日町近くの山奥の出身であるので、小さい頃新潟の親戚のお宅にスキー等でお邪魔したことが何度もあり、そう言った点ではこの周囲のイメージはできています。

 ホットスナックなぞかじる暇もなく道はくねりはじめ、Fitは果敢に登坂を始めました。
 洞窟のように地下水が流れるトンネル、長いスノーシェッド。
 途中にはコンビニはおろか街灯もない。
 険しい道が続きます。

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 いくつかのヘヤピン・カーヴ、笑ってしまうようなエキサイティングなうねり(まるで小腸のよう)をぐいぐい登って行き、ふと我々は、青白い月光の下に走り出ました。
 山に白いものが!

 思わず車を停め、降りてみると、5月だと言うのに寒いほどの冷気が立ちこめています。
 谷間には雪解け水が滝となって落ちる音。
 空気はしみじみと澄み渡り、明らかに我々が後にしてきた地方のものとは違う。
 遠くまで来たのだという実感に満ちた、この心地よさがたまりません。

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 辺りを照らすのは、いかに明るいと言っても月明かりだけです。
 そして僕はタオルに次いで2つ目の忘れ物、「三脚」に気付きました。
 すなわちピーキーすぎるシグマ DP2メリルは到底あてにならず、ここでもMX-1、置けるところに置いてバルブ撮影を試みます。

 記念撮影、じっとしてられずゴーストと化す我々。

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 車がちっとも来ないので、道路の真ん中にカメラを置いて、バルブ。
 星も写りました。

 楽しくて仕方なく、うきうきして時間のことをうっかり忘れてしまいそうになりました。
 そう、フェリーへのタイムリミットがある以上は、常に余裕を持って行動せねばなりますまい。
 早く着き過ぎて笑われるのは大いに結構、しかし遅れて着いては我々が笑うことができなくなってしまう。

 しかししかし……。
 僕は旅先で平均1・7回は高校の現国の教師が言ってのけた「トラベルとトラブルは語源が一緒」という、まあ要はウソ格言を思い出すのですが、ウソでもそれはもっともらしく実感できるのであり、むしろある意味では、それを感じた時にこそ「旅」というものの本質に触れたような気さえするのです。
 ただ、トラブルはあくまでトラブルであり、できれば避けて通りたいですよね? 皆さんそう思われますよね?
 そいつは残念でした、今回も高橋ティーチャーのウソ格言タイム到来、「トラブル/トラベル義兄弟説」を思い出す頃合いがやってきてしまったようですよ。

 キヤーッ。
 この旅最初の写真的山場を満喫したのも束の間、ちょっと進んだ辺りで、我々は悲鳴をあげました。
 ついでにFitちゃんも悲鳴的急ブレーキ。
 なな、なんかある!
 日本海へ抜けようとするこの俺たちの目の前に、あってはいけないような、なんかが!



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 通・行・止・!
 Uターン 5・5キロメートル!(吐血) 

 そんくらいの距離、ってのは、平野でのオハナシですよ。
 あの小腸カーヴスを我ら5・5キロメートルも登ってきたと言うに、振り出しまで戻れって、あなた!
 狭い車内はにわかにパニックに陥りました。
 
「この峠越えられないって、他の道わかんないじゃん」
「いいから戻るんだよ、戻るしかないんだから!」
「待って、写真」
「写真なんか撮ってないで!」
「他に道無かったらどうする?」
「あの看板に方面とか書いてあったでしょ、それと同じ方面の道を……写真に写ってない?」
「そういうの撮ってねえや(笑)」
「馬ッ鹿野郎!」
「馬鹿ってこと無いだろ!」
「だって馬鹿じゃん!」
「馬鹿って言った人が馬鹿」
「……」
「……」

 その後、十日町の方へ行ったらいいのではないかと考え、そちらへ走ってみるも、これまた別の小腸に迷い込むようであり、盲腸あたりでなんか山奥の大人の隠れ家みたいな高級旅館には辿り着いたが、フェリーのりばへは辿り着かなかった。

「十日町に行ったって意味ねえし! 目的地は直江津だし!」
「さっき十日市方面って書いてあったの! だから!」
「だいたいおむさんはすぐ十日市って言うけど、十日町だし!」
「十日町市でしょ! 知ってるわよ! 馬鹿、あほう!」

 結局のところ、冷静になって考えてみると、我々には全く土地勘がない上に夜中であり、これはもうどうしようもない事態。
 車を停め、九字を切ってナビの検索設定を使ったことすらない「有料優先」に指定してみる……すると。
 南無三! ブルーのラインが大きく迂回しつつも、目的の直江津へと繋がったではありませんか!
 峠越えのダイレクトさからすると、高速道路のルートはまるで横着なヘビがコタツに尻尾を入れたままキッチンのホットスナックを食おうとしてる姿のように見えますが、しかし、高速であれば間違いはない!
 だって、その確実性にお金を払うんですよ?

 とすれば、ケチったルート選択をせずに、最初っから全部高速で行けば良かったのか。
 しかしね、みなさん、考えてみてもください。
 そうして下道に降りたからこそ偶然出会えた、あの峠でのひととき、楽しく撮ったバルブの写真……あれだけで報われているじゃあありませんか。
 高速で最後までズバッと行って、それで……それ……それも良かったかも知れねえな。


 午前1時を20分ほど回った頃、我々は直江津の佐渡汽船フェリーターミナルに辿り着きました。
 一時駐車場に車を停め、3時50分の受付開始までしばし休息です。
 おむさんがトイレに行っている間にフィット・ホテルのベッドメイキングをしておいたら、戻ってきた彼女はごく自然な動作でそこに滑り込み、まるで昨日もそうして眠ったというかのような安定した寝息をすぐに立て始めました。

 周囲にはやはり朝一番に佐渡へ渡るのだろう車たちが十数台ひしめいていて、臨時の寝床を作ったり、佐渡で乗るのか自転車を組み立てたり、なんか怪しい取引をしたりしています。
 助手席を倒し、長距離運転の疲れをじんわり感じつつ、僕も少し眠ることにしました。

 車ごと船に乗る、初めてです。 
 自分の車で離島を走る、もちろん初めてです。
 楽しみでワクワクして眠れないんじゃないか、眠れなかったら辛いな……そう思っているうち、浅い睡眠の幕は、いつしか自然と下りてきたのでした。

 (つづく)

>> 2015/05/17 07:39
お体大丈夫でしょうか?
私もダウンしていたのですが、
コメントで他にも熱っぽい方がいたり
こういう気温の変化のある季節は
体調をくずしがちですね。

楽しみにしていた続き、こんな超大作を仕上げるには
やはり体力がいりますね。
しかも、ハラハラドキドキ
読んでいるこちらまで肩に力が入ります(笑)

口げんかのくだりも
そういうの撮ってねえや(笑)で
『笑ってごまかす男に、キレる女』
男女の脳のちがいを見たような・・・。

いよいよ佐渡の写真でしょうか、とても楽しみです。
>> 2015/05/18 06:31
ぴよ社長さん>
心配していただいてありがとうございます。
こうして駄文を書けるくらいに回復しましたので、よかったです。
昼はあんなに暑いのに、朝晩寒いですよね。

これはもうホントに起こったことと考えてたことをつらつら書いているだけなので、多少の時間があれば苦労はしません(笑)。
我々、生まれも同じ地域なせいか、ふたりとも口汚くてですね……こんどはもっと脚色して書こうとおもいます……。
おはずかしい。

これでようやく、晴れて佐渡島に上陸です(笑)。
>> 2015/05/18 22:16
山道の通行止めは困りますね。
台風の後なんかは何度か山で通行止めを経験したことありますが
言っても県内、まあまあ、なんとかなるもんですが
知らない土地にしかも夜中とは(笑)

旅に出てみると本当の相性が分かると聞いたことがあります。
僕のとこも旅や遠出となると毎度言い合いになったりします。
相性ってなんでしょうかね。

続きが気になりますがのんびりと更新してください。
>> 2015/05/19 20:32
atushiさん>
こんばんは。
通行止めってことだけを考えると、確かに近所でもたびたびあったんですよ。
台風、樹が倒れたとか、道路水没したとか……それにあの震災、あの時は道路がもうそりゃグニャグニャでしたから……。
しかしそう、真っ暗な他県の山奥でいきなりこう来るとは、僕ひとりだったらどうなってたかわかりませんよ。
ふて寝してたかもしれません。

旅で本当の相性を確かめる……なるほど、それはありそうです。
一緒に暮らしてみないとわかんないというのと似てますね。
そういう小さな山や谷を越えてより信頼を得ていく……その有様もまるで旅路であります。
えー、結婚式のスピーチじゃあないんだから。

ありがとうございます。
気長におつきあいいただければ嬉しいです(笑)。








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Author:狛
狛です。
スナップ経由の風景写真、巨樹探訪旅、無計画な遠出の紀行文。
スバル・フォレスターが来て、調子に乗っているようです。

・巨樹探訪旅やってます。・
「巨樹を訪ねる」

・写真展(2013.2)・
「旅の、まだ途中」
(Web版が見られます)



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