コンパクトカメラというのは、ある意味究極のカメラではないでしょうか。レンズの交換ができませんが、それと引き換えにしっかりと約束を果たす存在。
コンパクトカメラで撮られた優秀なスナップを見ているうちに、僕もひとつコンパクトを装備したくなって……手に入れたのがこれです。

Pentax ESPIO mini。かなり小さな、しかし立派なフルオート・コンパクトです。
またペンタックスですか、と言われそうですが……まあ実際なんだかペンタックスが増殖してますが……こんな僕でも、最初はフジのナチュラブラック(24ミリf1.9という凄いフジノン搭載)が欲しかったのです。でも、ブラックは最近中古市場でかなり高騰かつ品薄。
次にクラッセWを使う機会に運よく恵まれたわけですが(
「恐るべし、クラッセW」の回をご覧下さい)、凄く良いカメラなので値段も凄く良い。
でも、実際使ってみて良いとわかっているのに高いというだけで買わないのはおかしいし、というか、ここであえて違うものを選んじゃうなんてまるで変態みたいですが、まあ、それでもいいです(笑)。
こいつのことを知ったらこいつで撮ってみたくなってしまったんですよ。

自分のことがつくづくよくわかりませんが、それは置いといて、エスピオミニがどんなカメラかというと、94年発売のペンタックス75周年記念カメラだそうで、60周年のLXはちゃんとメモリアルになってるのに、これは全然誰も知らない、ということで有名です。
嘘です。でも、知名度はかなり低そうです。ズーム搭載ばかりのエスピオシリーズの中ではかなり珍しい単焦点で、かつ高級機。
嘘だあ、だって外装プラスチックですよ? そう、そこがまことに残念なのですが、機能や中身の部分ではちゃんと他社の高級機に喧嘩を売っています。そこがペンタックスというメーカーのよくわからないところ。記念カメラで高性能なら、ガワも金属で作ってくれよ……。なんでなんだよペンタックス……。
気を落とさずに、このカメラの優れている点を挙げてみたいと思います。頑張れ!

・まずAF。早いし正確です。暗いところではスポットビームを照射してピントを合わせるので、真っ暗でも結構ピントが合わせられます(手ぶれは僕次第)。しかも小さいのに5点マルチ測距。ほぼ一瞬で合焦し、最短距離も30センチまで寄れます。
フォーカスの仕方が面白くて、近距離にピントを合わせると、シャッター寸前でレンズが伸び、ピントを合わせ、撮影し終えるとまた一瞬で引っ込みます。僕のように、オートのコンパクトを使ったことがない人間にとってはとても興味深い運動です(←?)。
・レンズは「ペンタックス32ミリf3.5」という無名レンズ。ですが、よく写ると思います。シャープネスや色再現もいいし、逆光にも結構強いと思います(光量落ちはありですが、個人的には面白がってます)。このくらいいけるんなら、ポジを詰めても面白いと思います。
・ファインダーもナイスです。見易さはまあ普通ですが、驚くのは、この小さい中に液晶が内蔵されてて、パララックスの生じる場合にその部分をマスク表示する機能があること。コンタックスのGシリーズが機械仕掛けでファインダー像を小さくしていた気がしますが、あれを液晶でやってくれます。撮影距離が近過ぎる場合も液晶が点滅。
・シャッタースピードは、バルブから400分の1秒まで。クラッセとGRがともに500分の1秒までなので、まあまあ頑張っています。レンズバリアをスライドさせるとその時点で起動、レンズが出ない仕組みなので、取り出してすぐ準備が整う感じです。ただし、ストロボ発光禁止が記憶できないため、暗くなって来たら注意が必要。ストロボボタン2回押し、ストロボ殺しコマンドを覚えよう。
・電源はCR123Aという3Vリチウム電池で、シュアファイア(特殊部隊も使用する強力なフラッシュライト)と同じ電池です。ボディは小さいのに結構パワフルな感じです。そのせいか、動作はすごく機敏で、タイムロスはかなり少ない感じです。
上に書いたストロボの他に弱点らしい弱点と言えば、マニュアルでの露出補正ができないこと、作動音が大きめなこと。あと、フォーカスもオートのみなので、真っ暗な隅田川の対岸にピントを合わせたい時なんかはビームがそこまで到達しないので、合焦しにくい(笑)。まあ、そのくらい。

こういう風にちゃんと出来てて、内部構造も金属のフィルムガイドレールが仕込んであったり、クラッセといい勝負できるような随分凝った作りなのに、外装はごく安っぽいプラスチックなんですよね……。
なんででしょう。ネットで検索すると、ズタボロになってるものも見かけます。金属至上主義というわけではないですが、こういう外装では絶対に侮られてしまいます。いいカメラだってことを気付いてもらえないんじゃないのか!?
GRやコンタックスTなんかは、マグネシウム合金とか伝説の金属(チタンのことらしい)とか、見ただけ、触れただけでも、いかにも優れた道具であるということがわかりますが、こいつに限っては実際使ってみるまでわからない。先人がどこかで書かれていましたが、このギャップはそう、まるで「羊の皮を被った狼」です。
惜しい点を抱えながらも、一度使ってみると、その隠れがちな良さを誰かに伝えたくなるカメラです。そしてそのためにたくさん写真を撮っている。このツールをもっと使いこなしてみたくなる。
このサイクルを狙ってわざとこういうものを作ったんだとしたら、ペンタックスって恐ろしいメーカーだぜ(多分違うと思いますが)。