2016/02/17//Wed.
巨樹を訪ねる 幻想の森 老杉群
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DP2 Merrill / 30mmf2.8

 辿りついた。
 そう、すぐにわかった。
 そこから、明らかに空気の重さが変わったのだ。

 何という場所だろう。
 すぐには言葉が出ず、思い出して書こうとしても、うまく浮かんで来ない。
 単に書くなら、それは森だ。
 しかし、そう単純に書くことなど、到底できはしない。
 そこにある樹々、杉たちはすべてが高齢で、大きく、何よりも、見たことがないような異形なものばかりだった。

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 森の入り口に立って、踏み込んでいいものかとまず躊躇した。
 手入れをする人たちがいるのだろう、下生えなどは取り除かれ、光も射しているが、違うのは、やはり空気だ。
 そこにある空気や影が明らかに何物かの影響を受けている、それを肌が感じるのだ。
 何物か……それがこの老杉たちで無くて、他に何がいよう?

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(クリックで拡大)

 巨樹を巡るうちに、いくつも杉を見て来た。
 しかし、それと、これらも同じ杉という樹なのだろうか……。
 この森のどの樹を見てもそう疑う。
 どれひとつとして、今まで自分が思い込んでいた杉の姿をした樹はなかった。

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 地方に伝わる伝承や口伝を採集した民俗学の本に、たびたび見かける……

 「二つ以上の幹が融合したようなものや、窓のような穴を持つものは、古来から神の宿る樹と信じられ、杣人もこれを伐ることを避けた」

 周囲を見回すが、ここではほとんど全ての樹がそれに当てはまるのではないだろうか……。

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(クリックで拡大)

 霊異なものを信じないというわけではないが、縁があるとも思えない。
 自分は、そういう人間だ。
 しかし、この森にいると、明らかに場違いな……自分という存在がここに居るという事実が間違っているというような感じがしてならない。
 それは、ここが霊や神の森だからではないだろうか。

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(クリックで拡大)

 巨樹を前にすると、様々な感情をおぼえる。
 その力強い生命力を感じ、自分まで生きる気力が増すように思える時もあるが、その一方で絶えず感じているのは、もの言わぬ巨大な命に対する畏れだ。
 それでも、一対一であれば、対話できるような気にもなれる。
 が、相手が多数で、しかもそれに囲まれるという状況はどうだろうか。

 はっきり言って、心の準備ができていなかった。
 それはかなり強烈な経験であり……夜中にこの森に迷い込んでしまったとしたら、発狂していたかもしれない。
 冗談ではなしに、そう思った。

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 いったい、この杉たちの身に何が起きて、こんな姿になったのだろう。
 この森の環境? 気候のせい?
 だとしても、この脈絡のなさはどう考えたらいいのだろう。
 不思議というのを超越している。
 その存在が目の前に、周囲いっぱいに広がっている。

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 解説文。
 この「幻想の森」の土湯杉の存在は、地元の人たちには昔から知られていたものの、巨樹としての計測や保護などが始まったのはごく最近(2000年頃)とのこと。
 周囲の探索が進めば、また新たな巨樹が発見される可能性もあるはず。 


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 おそらく幹周が最大と思われる株の前で。
 霊気と言っていいだろう、周囲の空気の重さに思わず顔がこわばる。

「幻想の森」 老杉群
山形県最上郡戸沢村
樹齢:1000年
樹種:スギ(土湯杉)
樹高:およそ25メートル
幹周:15メートル(最大のもの)




 思わずシリアスムードで書かずにはいられないような、ものすごい森でした。
 ここにいる間中、僕は一時も力が抜けず、息をひそめるようにして写真を撮っていたのですが、世の中には色んな人がいるもんです。
 まさかこんな険しい山奥で他の人に会うとも思っていませんでしたが、後からやってきた若い3、4人の集団なんかは、ぜんぜん平気らしく、アハハと笑いながらスマホで写真を撮りまくったり(偽シャッター音うるせえ)、樹々に馴れ馴れしく触ったりしていました。
 気分悪い、早く出てってくれ! と心から願っていましたが、一周して出てったと思ったら、女、
 「どっかに帽子落としたみたーい」
 ……こういう人には神の加護も祟りも全くないんだろうなあ。 
 そう思いました。


>> 2016/02/17 22:16
地面から水を吸い上げて枝の先へと送る音が脈々と聞こえるような力強い木々ですね。
きっと地下の根もたくましく地中を這っているんだと想像してしまいます。
>> 2016/02/17 22:35
ふたつ(複数)のものがひとつになるのってすごく憧れていて、こちらの森の樹は憧憬そのものだなぁと思いました。
重なるのではなく本当にひとつになるエロティシズム。
>> 2016/02/18 08:23
こういう杉、初めて見ました、
なんと言ったらいいのか…
初めてここを見つけた人の
驚き様はすごかったでしょうね。
山形ってすごいところだなぁと
あたらめて思いました。
出羽三山もあるし、そういう土地なのかも。
>> 2016/02/18 23:34
snap.comさん>
こんばんは。
根は枝と同じくらい大きく育つといいますからね、巨樹となれば相当のものです。
地中にも森があるということなんだと思います。
>> 2016/02/18 23:40
さかしたさん>
これが自然の造形であるという、それを見せつけられて茫然とするしかない驚異の森です。
確かに、とろけてくっついたような感じ。
この形を成すためにどれだけの年月を経たかも……人間には実感できないような尺度です。
そこに神霊を感じ得るのでしょうね。

>> 2016/02/18 23:48
ぴよ社長さん>
おそらく、夜にこの森に迷い込んだような人も、きっといたのだと思います。
その心を想像すると……。
少なくとも樹を切ろうと思わなかったから、今こうして残っているのですね。
山の霊威に触れたような気がしました。
こんな深さを持った山、うちの方には全くないので、鮮烈な体験でした。
>> 2016/02/20 17:35
こ、これは・・・。
巨杉の群れですか!
それも一本一本の姿がそれぞれ意思を持ったかのように
様々な形に成長しているだなんて驚愕です。
神の宿る樹であると信じられる云々の話も真実味がありますね。
幻想の森という名称は自分の想像するイメージとはちょっと違います。
夜に迷い込んだら発狂してしまうという狛さんの表現の方がしっくりきますね。
昼でもたった一人でこの森に足を踏み入れるのは躊躇してしまいそう。
ただ怖いというのではなく、やはり畏怖です。
最近は一本の巨樹でも感じますが、ここのような老杉群だと足が進むか心配です。
いや~、凄いものを拝見させていただきました。
>> 2016/02/21 13:05
RYO-JIさん>
参照した資料にも一応複数形で書かれてはいたのですが、写真は一本だけを撮ったものだったので、まさかこんな場所であるとは思いませんでした。
巨樹を前にして感じられるあの独特の「おそれ」の感情……あれが多重に感じられるというのは、ほんと、ここから先進むかやめるか、判断を迫られるかのようなプレッシャーでした。
400キロ走ってきたから、というので踏み込みましたが。。

RYO-JIさんの言う通り、幻想の森という名はあんまりしっくりは来ないのですが、他にどう付けるとなると、地元の人も悩んだかもしれません。
幻想は幻想でも、ダークファンタジーの世界。
中世暗黒時代の魔の森みたいなイメージ。
でもまあ、魔なんて言えないから、やっぱり幻想になっちゃうのかなと。
森は古来怖い所だったんだと本能が思い出すような、貴重な体験だったと思います。
行けてよかった。








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狛です。
スナップ経由の風景写真、巨樹探訪旅、無計画な遠出の紀行文。
スバル・フォレスターが来て、調子に乗っているようです。

・巨樹探訪旅やってます。・
「巨樹を訪ねる」

・写真展(2013.2)・
「旅の、まだ途中」
(Web版が見られます)



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