2016/06/06//Mon.
新緑の岩手へ さようならマルカン百貨店
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 ……4年前のあの日、花巻まで来たはいいけど、どこへ行ったら楽しいのか見当もつかず。
 その時、唐突に幸福な午後のひとときをくれたのが、このお店でした。

 花巻のマルカン百貨店に別れを告げるという、今回の旅の主要事項を、ようやく果たす時がきました。
 朝からの本降りの雨は花巻入りしても晴れず、さながら涙雨という感。
 近所の有料駐車場へ車を停めに行くと、その雨の中、やけに混み合っています。
 まあ、そこそこ予想はついていたのです。
 昨晩ビジネスホテルで「岩手めんこいテレビ」を見ていたら、もうこのマルカン百貨店閉店のニュースが大々的に特集されており、しかもそれが、地方局の面目躍如といわんばかりの愛のこもった特集で、あの大食堂の魅力が170%伝わる感触。
 いつも感心するんですが、めんこいテレビ、やるよな。
 そうでなくとも、このよき昭和レトロの象徴がまたひとつ消えて行くというニュースは、ネット上ではほうぼうで取り上げられている様子。気のせいと思おうにも、駐車車両のナンバープレートの出所が日本各地バラバラなのが何よりの証明です。まあ、我々も他所様のことは言えないわけですが……。

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 正面入り口から衣料品の1Fフロアに踏み込んで、思わず後ずさりました。
 ほんとに日本中から来てるのね……という混みぶり。しかもみんながみんな、6F大食堂を目指して並んでいます。
 勘の悪い狛でも、この列がずっと6Fまで続いていることにはすぐに気付きました。
 
「試されている……私たちのマルカン愛とGWが」
「ディズニーランドじゃあるまいしね」

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 行列はエレベーターをドライに無視して、やはり館内の階段にずっと続いていました。
 6F……遠き道のり。
 館内案内を読むと、マルカンが衣料品に重きを置いたお店だったことが伺い知れます。
 地下の食料品店や本屋や、そういうのはないんだな。
 思い出してみれば、むかしむかしの我らが故郷の街にも、こういった衣料品店型の百貨店みたいなのがあったもんです。
 衣料品店はつまんないんだけど、最上階に薄暗いゲームセンターがあって、10円から30円とかでゲームができた。
 いまはもう取り壊されて、その後に経った店も過疎ってシャッター閉じてるような有様だけど、狛とおむさんの脳裏にはその思い出が焼き付いており、今でも時折その残像を辿ることがあります。

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 しかしね、ブログの記事はいいよな、時を早送りできるもんね。
 ようやくこのわびしい屋上の光景を眺めるまでに1時間近く。
 なんで6Fじゃなくて屋上を眺めてるかというと、実はここがキモで、我々はさらに大きな試練を与えられた。
 長い待ち時間の中で、幾人もの強者たちが脱落していった先、ようやく約束の地たる大食堂の扉が開かれん……と思いきや、我々は警備員さんに7Fに連れて行かれました。
 恐ろしい、あまりにも恐ろしい……その入り口にはこう書いてある。「この入り口をくぐる者、全ての望みを棄てよ」。
 実際、ここまで共に登って来た名も知らぬ目の前の戦友たちの多くが、7Fのあまりの恐ろしさにビビって脱落しました。
 それはまさに地獄の第六巻のごとき渦巻きの悪夢……催事場スペースを蛇行させて時間を稼いでいたのですね。

「何というマルカン人気の爆裂! 俺はこわくなってきた。もう……」
「ここまで来て辞めるとか言わないでしょうね」
「だって」
「『辞めたければ辞めたって、いいんですよ』」

 その言葉最悪。狛はこういった種の毒のある優しさが大嫌いなのです。
 オムーサンはそのことを知っていてこう言っている。
 なんという(※この後の展開、不愉快なので少々おまちください)

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「見てよ、電話機がとてもモダンだね」
「まったくモダンも隙もあったもんじゃないネ、ってか」

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 とかやって、だんだん待つことに心身ともに慣れてきて、催事場や階段こそが我が家という感じにすっかり落ち着き、
「そーこにいーけばー、どーんなゆーめもー、かーなうと、いーうよー」
 と、二人でガンダーラを熱唱し始め(※実話)た頃、我々はついに天竺、もとい大食堂に到達したのでした。

 おお……まばゆい。やはりここは素晴らしい。
 この照明、このインテリア……スミソニアン博物館ものですよ。
 前にも来てるけど、あの時はガラガラだったから……活気があるとまた違った風に見えます。

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 メニューが実に豊富(捌ききれないので減らしているようですが)。
 「めんこいテレビ」の特集でナポリカツを放映してしまい、実際これがものすごく旨そうだったので、即完売状態になってしまってます。
 食いたかったな。

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 麺類も豊富。
 洋食だけじゃなくて、そばやおすしも食べられるという、誰もが幸福になれる食卓です。
 今、ファミレスがそういう役割を担っているんだろうけど、自分が子供だった頃つれて来てもらったお店に、今度は自分の子供を連れていったり……その子が、その歳の自分と同じ顔で同じものを食べたり……そういう家族の歴史を紡げる場所というのは、やっぱり貴重だと思います。
 自分にはそういう場所がどれだけあるのかな。

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 ほんとに、家から600キロ先じゃなかったら、ちょくちょく来たかもしれないな……。
 自分の街にかつてあった百貨店のこと、その時子供だった自分のことを、ショーウィンドウのガラス越しに見ている気がしました。
 とっくに忘れ去っていたあの時代のこと……。

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 思い出で胸がいっぱいになりそうなところ恐縮ですが、と、腹がグウと鳴って現実に引き戻されます。
 何はともあれ着席。
 待っている人がまだまだいるから、手早く昼ごはんにしなくちゃ。

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 ザ・シンプルな中華そば(¥380)と……

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 やはりカツカレーでしかないカツカレー(¥600)。
 
 これ、ビジュアル的には当たり前すぎていまいちパッとしないかもしれませんが、食べてみて驚きました。
 この食堂、こんなにうまかったんだ……。
 永年、とても多くの人に食事を提供して来たゆえなのだと思いますが、誰にでもおいしいと思わせる、ひねりも無駄もない味。
 中華そばの醤油味の濃さ、カツカレーの甘さ辛さとカツの薄さ。ものすごく丁度いい……なんて、食レポは難しいのでやめますが、食堂の雰囲気や眺望とともに、気持ちを明るくさせてくれるような、すごくいい昼食になりました。

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 そして、マルカンソフトも食う。
 またおむさんはコーンじゃなくてカップを選んでましたけど、ネイティヴのマルカン子はうず高いソフトを箸で食うんだぜ。
 作る人も、運ぶ人も職人。

 あっという間に平らげてしまって、やっぱりちょっと寂しくなってしまいました。
 こんなにおいしくて楽しい食堂を見つけたというのに、もうすぐ無くなってしまうなんてね……。
 最後に食べられてよかったと思うけど、味わっただけに、よけい寂しくなるかのようでした。
 今、書きながら思い出しても、とてもうまかったんだよね。
 ここに、「また来ます」とできないのが、けっこう辛かった。

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 しかし、食べ終わってしまったし、順番を待っている多くの旅人たちが続いているので、食器を下げに来たお店のおばさんに、
「とてもおいしかったです。ありがとうございます」
 とだけ言って、大食堂を後にしました。
 さようなら、マルカン。


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 じりじり登って来たのとは裏腹、帰りは一瞬です。
 でも、忘れてはいけないのは、マルカンが百貨店であるということで、はなむけを送るのであれば、何か買いものして行くのが良いだろうと思って。
 車旅行で良かった。こういうところで日用品の買い物ができます。
 食器売り場で、耐熱ガラスの容器、ハリオのガラスポット、ピンク色の小型片手鍋を買いました。
 毎日使ってマルカンを思い出します。

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 お土産を下げて外へ出てみると、雨はすっかり上がっていました。
 青空の中に、閉店まぎわの百貨店までもが晴れ晴れとして見えました。
 おつかれさま、ありがとう、最後に来られて良かったよ。


(旅はもうちょっとだけ続きます)


・追伸・
 マルカンは6月7日に閉店ということだそうで……つまり明日ですね。
 行った人みんなをファンにしてしまう大食堂については、存続を求める声が多く、実際に検討されてもいるようです。
 岩手にはまた行くと思うし、移設でも何でも、その時に結果が出ていれば、ぜひまた寄りたいです。

>> 2016/06/07 08:05
食堂のおばちゃんも、一緒にならんでいたお客さんも
まさか関東からわざわざ来てるとは
おもわないんでしょうね〜。
値段の安さにびっくり。
しかも実物も美味しそう。

売り場ご案内の写真、昔百貨店のチラシを作っていたので
なつかしいような、苦労した思い出とか
なんともいえない気持ちがよみがえってきました(笑)

大食堂、移転して続いてほしいですね。
次回の岩手の旅で再訪できますように。
>> 2016/06/07 22:44
ありましたねえこんな百貨店が。
僕の地元にもありましたよ。
買物に付いて行ってもつまらないんだけど屋上のゲームだとか乗り物目当てで。
いつのまにか潰れてましたね。

これほどお客さんが並ぶとは本当に愛されていたのでしょうね。
そして今の世だからこそ惜しむ声が多いのかもしれませんね。
こういった店は貴重ですよ。
子供の頃、ニチイってショッピングセンターのレストランに行くのが
とても好きだった記憶を思い出しました。
>> 2016/06/08 06:51
ぴよ社長さん>
たぶんマルカン始まって以来の大行列なんじゃないかなと……。
並んでる時は、こんな遠くまで来て何やってんだろうと思いましたが、今では行けて良かったと思っています。

へえ〜、ぴよさんは百貨店のちらしとか作ってたんですか。
一般市民としては、ああいうのを見るのも楽しかったですよね。
催事とかもあって。
いかにも昭和の記憶という感じになってしまっていますけども、良い時代だったなあ。

マルカンや大食堂については、今も事業引き継ぎが検討されているようです。
8月にどうなるかわかるらしい。
こういう場所を残すというアクションのお手本になってくれるといいなと思います。
>> 2016/06/08 06:58
atushiさん>
地元の百貨店のことを考えると、想い出がいっぱい蘇りますね。
そうそう、親についていく買い物って、いつもつまんなくて。
僕らのとこのは十字屋っていうのですけど、最上階の大きなゲームコーナーと、ピーナツソースがかかったソフトクリームがありました。
表面のピーナツソースが冷えて固まって、面白いソフトでした。


だけど田舎だから、高校生になっても、おなじとこに遊びに行ってました(笑)。

6階にあるあの空間自体に意味があったと思うので、完全引き継ぎは無理だろうなと思いますが、建物が耐震上問題があるというので、仕方ないですよね。
存続の可能性はうまく育てて行ってほしいものです。
>> 2016/06/08 08:03
このコメントは管理人のみ閲覧できます
>> 2016/06/09 06:25
鍵コメさん>
十字屋に関する驚きの情報をありがとうございました。
そうでしたかー、結構チェーンしてたんですかね。
思い出してみれば、かつて佐原にもあった記憶があります。
あの頃は何かと百貨店の時代でしたよね。
ただただ懐かしい……。








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スナップ経由の風景写真、巨樹探訪旅、無計画な遠出の紀行文。
スバル・フォレスターが来て、調子に乗っているようです。

・巨樹探訪旅やってます。・
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・写真展(2013.2)・
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