2016/07/29//Fri.
巨樹を訪ねる 剣桂
fukushima1539.jpg
K-7 / DA 21mmf3.2
MX-1

 「剣桂」を訪ねた日は雨で、しかもそれが、周囲が森深くなるにつれてどんどん土砂降りへと変わって行きました。
 長いトンネルを抜けた先、ハイキング道や温泉なんかもある山懐の村で、しばらく行ったり来たり探したあげく、辿り着くことができました。


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 道路で案内板を見つけ、ちょっと森を進んで行った先、明らかに他とは雰囲気の違う樹を発見することができます。
 独特な樹形。
 何本もの幹を強引に束ねたようで、しかも背がとても高い。
 無理なほど上へ上へと伸びている姿には、アンバランスな印象さえ受けます。
 まるで風に炎を揺らす巨大な蝋燭のようだと思い浮かべたのですが、皆さんはどうでしょうか。

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 その背の高さや樹形に圧倒されるのか、少々近寄り難いような感じさえ受けつつ。
 近づいてみると、根元の祠には本物の剣が奉納されています。
 日本刀ではなく、古代の剣です。
 地元には、この樹に剣を奉納する風習があるとのことです。

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 傍らの神社と。
 もちろん、この樹を神木とする「剣桂神社」です。
 かつてこの辺りに恐怖をもたらしていた魔物を、剣をもってこの樹に封じ込めたという伝説があるそうです。

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 実物の剣を見て、剣への云われを知ると、この桂の樹形もだんだんと地に直立した剣のように見えてきました。
 それ故の剣桂であり、桂でありながら巨大な剣であるのでしょう。

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 太い根が、いましも祠をひっくり返しそうでした。
 住んでいる土地柄か、桂という樹にあまり馴染みがないのですが、特徴として、この樹のように多くの幹を増やしながら背高く伸びていく樹のようです。
 葉はまさにこの写真に写っている円形のがそれで、見方によって「ハート形」と言われることも。
 剣みたいなヤツのわりに可愛い葉っぱなんだね、なんて思いました。

fukushima1540.jpg

 個人的な意見ですが、桂の樹というのは、杉や欅に比べて難しい印象です。
 どんどん幹を増やし株立ちになって育ってしまうので、巨樹ともなると、果たしてそれが1本の樹と言えるのかどうか、判断が難しいと思うのです。
 樹齢も幹回りも、すごいデータを持つものがいくつもあるのですが(樹齢1000年、幹回り10メートル以上もざらです)、あまり「樹」を見ている気にならず、小さな「林」を見ているような気になってしまう、というか。

 ただ、桂にも色々あるのは確か。
 株立ちと言えど、この剣桂のように立派に巨「樹」としての存在感を放つものもあるわけですね。
 食わず嫌いをしないで、色々見に行ってみるに限ります。

fukushima1529.jpg

 今一度、正面から人間モジュールとの比較を。
 幹回りは9.7メートル。

 雨の中、色々と下らない工夫をして撮りましたが、この回の反省が三脚導入のきっかけとなりました……。
 加えて、雨の森の中という複雑な光条件下では、シグマのカメラは全く太刀打ちできず、新しいカメラ導入の決意を固めるきっかけともなりました……
 (カメラ欲しいだけだろ、とか、都合のいい言い訳に聞こえますが、シグマでの写真は本当に全滅だったため、今回は拡大できる写真がありません……)。
 巨樹を撮りに行くというのは、2回行けるかどうかわからないところも多いので、確実に、その時の最高の形で残して行きたいと思いました。



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 説明その1。
 この樹は2000年に林野庁が選定した「森の巨人たち100選」に登録されているとのこと。
 単なる幹回りの大きさではなく、総合的に見て後世にぜひ残すべきと判断された100本のうちの1本、というわけですね。
 説明文によってデータがバラバラですが、これが一番新しいし、確かかもしれません。

fukushima1528.jpg

 説明その2、神社のそばにあったもの。
 そう、中国では月には(ウサギじゃなくて)桂の樹があるとか、桂男がいるとか言うらしいですよね。
 ただ、月桂樹、月桂冠とか、それは別の樹(ローリエ)であるので、この説明文はちょっと混同してないもんかな……。
 
fukushima1532.jpg

 説明その3、道路から林の入り口にあったもの。
 松平定信は1800年頃の人物なので、考証的に矛盾はないようです。
 その時代にこういう古代チックな剣を用いて魔物を懲らしめたというところが、逆に伝奇ロマンぽくて好きです。
 ちなみに、この板にあるように、よーく探すと、幹の奥の方に、本当に剣の束のような遺物が刺さっているのを見ることができるそうです(僕は発見できませんでした……笑)。


fukushima1531jpg.jpg

「剣桂」
福島県西郷村
樹齢:370年
樹種:カツラ
樹高:45メートル
幹周:9.7メートル




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 ・追伸・
 強い雨降りの森を2時間近く歩き、道は川みたいだし、きのこは生えてるし、夏の終わりだというのに身体が冷えてしまい、新甲子(かっし)温泉に入って帰ることにしました。
 古い高原ホテルの風情を感じつつ、次々訪ねた福島の巨樹の印象を湯気の中に思い浮かべました。


>> 2016/07/29 23:16
へぇー新甲子にこんな立派な桂があるんだ。
狛さん杉や松が多いからとても新鮮です。
古代の剣を祀ってるのに松平の殿様が鬼神を封じ込めたってなんか時代が行ったり来たりしてる感がおもしろいなぁ。
>> 2016/07/30 08:41
いつも巨木シリーズでは、すごいすごいしか
言えなくなってしまうのですが。
本物の剣の伝説、神社もあいまって
今回は今迄に無いすごさです。
古代の剣というのが、神話みたいでロマンを感じます。
林みたい、というのはきっと、同じくらいの太さの幹が
あつまっているからそう見えるんでしょうね。
となりの神社、小さいお社かと思ったら
狛さんとくらべると、そうでないことがわかりました。
記念写真は大事ですね。
>> 2016/07/31 19:05
さかしたさん>
甲子温泉界隈をご存知で?
僕は実は幼少時の夏休み、両親が連れてきてくれた想い出があり、なんて山奥なんだという一種隔絶感を味わった土地でもあります。
今もすげえ山奥という点は変わらないんですが。
巨樹になるのは、どうしても杉、欅、もっと西では楠が多くなるのは仕方ないことですが、この剣桂のように、ユニークさが付属しているとやる気が出ますよね。
松平の一族には古えの破邪顕正の剣術が密かに伝承されており、一族の繁栄の裏には常にこの<力>の存在が……という、ちょっとなんか菊地秀行とか夢枕獏的な悪い脳みそが働きそうになる設定です。
>> 2016/07/31 19:12
ぴよ社長さん>
毎回応援ありがとうございます(笑)。
ただ数値的に比べてより大きいというよりも、こういう「おもしろい樹」の方が好きですね。
そういう基準で訪ねて行きたいと思っています。
剣桂は元気な桂の巨樹ですが、樹齢が大きくなると、最初にあった幹たちはすっかり死に絶えて、ひこばえ(後から出て来たサブの幹)がどんどん大きく育っているというものも多いようです。
世代交代をするんだったら、それこそ林や森のようですよね。
時に荒れた坂道を数百メートルも登って行ったり、三脚を忘れても戻れないなんてこともあるんですが、なんとか人間比較は撮ってみたいもんですね。
一番これがわかりやすいと自分でも思います。
>> 2016/08/01 22:19
カツラに関しては、私も狛さんと同意見です。
ネットに溢れている巨樹情報から興味をそそられるんですが、
写真を見るとやはりこれは一本の樹なのかなぁ・・・と疑問に思って
実はいままで除外している樹なんですよ。
でもまぁその一本の樹かどうかの問題は別にして、この剣桂は純粋に
心惹かれる樹であることは間違いないですね。
剣の云われや、本当に剣を奉納していたり、剣の束のような遺物が
刺さっていたりと興奮する材料だらけじゃないですか(笑)。
剣桂という名前にピッタリの姿がとても印象的です。

カメラの機材問題は、本当に私も最近痛感してます。
K-1の花火写真をクリックして見ると、やっぱりフルサイズが欲しくなりました(汗)。
>> 2016/08/02 07:17
RYO-JIさん>
RYO-JIさんもそう思ってたんですね。やっぱりね。
杉でも合体樹の時は「どうだろう」と思うことがありますが、桂はことさらそういうのばっかりですから。
でも、この剣桂みたいな樹としてしっかりしているものや、広々としたところにその桂だけがドンと存在しているような樹だったら、興味がわくと思います。
行くまでにちょっと苦労することもあるんだし、樹を選んで、面白そうなものを訪ねて行きたいですよね。
何千本網羅したからいいってもんでもないですしね、巨樹巡りは(笑)。

新しい機材については、実際に現場で比較できないので、導入には勇気がいりますが、K-1が来てからはほんと撮影が楽になったし、楽しくもなりました。
戻って来てから写真を確認したり選んだりするのも楽しみです。
花火の写真はISO6400ですが、これだけ写ってくれれば自分的には満足です。
悩みはデータの重さ……(笑)。
カードを2枚差しできるんですが、あっという間にいっぱいになります。
ほとんどJPEG撮って出しでいじることもないんですが、プリントしたくなるものが撮れた実感があった時は、後からRAWを保存するようにしています。








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狛です。
スナップ経由の風景写真、巨樹探訪旅、無計画な遠出の紀行文。
スバル・フォレスターが来て、調子に乗っているようです。

・巨樹探訪旅やってます。・
「巨樹を訪ねる」

・写真展(2013.2)・
「旅の、まだ途中」
(Web版が見られます)



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