2016/09/18//Sun.
巨樹を訪ねる 筏の大杉
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K-1 / SIGMA 28mmf1.8 EX DG
(クリックで拡大)

 横手市街を離れた我々は、秋田県最大の巨樹に会いに行くことにしました。
 「筏(いかだ)の大杉」です。


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 横手市の山間にある山内村の筏(いかだ)地区内にあって、幹線道路からも迷わず行けるように点々と案内が続いていました。
 神社の手前には、写真のような駐車場やトイレもあって、いかにも有名な樹らしい扱いです。

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 簡素な石段を上がって行くと、比叡山神社の境内が見えてきます。
 周りにも杉の木立が育っていて、神社がこうして見えても、大杉の姿は見えませんが……

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 ある距離まで登って行くと、突然、左手に巨大な気配を感じます。
 木立の向こうに、明らかに大きさの違う樹があります。
 この、身震いを感じるような気配……間違いありません。

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 石段を上りきったところで、「筏の大杉」と対面しました。
 でかい……そして神々しいです。

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 正面から向き合った「筏の大杉」。
 とても有名な樹で、巨樹関係の書籍やサイトには必ずと言っていいほど登場します。
 いわゆる「秋田杉」の中で最大の樹だそうで、同時に全樹種中、秋田県最大の巨樹です。
 カメラの水平が狂っているのではなく、実際に少し斜めに立っています。
 双幹の樹ですが、根元の感じからして合体ではなく、一本が分岐したのだと思います。
 ほぼ均等に別れて高く伸びている様は、見れば見るほど神秘的な感じを覚えます。

 ちなみに、秋田杉は秋田県に生育する天然の杉のことで、成長がゆるやかで年輪が詰まるため、植林のものより強度に優れるそうです。
 大館の曲げわっぱなど、工芸品に使われたりしています。

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 有名な樹である宿命か、訪れる人も多いのでしょう、こんな看板が立っていました。

「わたしも歳をとり、千歳か千二百歳か、自分の歳を忘れました」……

 周囲は半径5メートルほどロープで囲われ、根元までは近づけないように制限されています。
 ぽっかりと開けた空間になっていて、隣に立つ事もできないので、写真では大きさが伝わりづらいと思いますが、この「大杉のひとりごと」を読んでしまっては、乗り越えて行くような真似はできないというものです。

 実際、根元は白骨化しているような箇所もあります。
 負担を軽減させるためか、枝を下ろしてあったり、書籍の写真にあった太いしめ縄も外されていました。

 写真を撮っていると、ちょうど地元のお爺さんがお孫さんとやってきて、挨拶すると、こちらにも大杉のことを説明してくれました。
 聞けば、なんと大杉の管理を自治体から任されている方とのことです。
 周囲の草刈りも全部ひとりでやられているとかで、頭が下がります。

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(クリックで拡大)

 少し回り込んで。
 お爺さんの話では、20年ほど前まではこの又になったところに桜の樹が2本も着生していたとのこと。
 桜自体も樹齢60年ほどあったというから驚きですが、さらには、春にはそれでみんなで花見を楽しんだという……どういう状況なんでしょう、それは(笑)。
 しかし、桜があまりに大きくなってしまって、杉の幹に亀裂が入ってしまったので、98年頃伐採されたそうです。
 そのにぎやかだった頃にも是非訪れてみたかったと思いましたが、大杉の負担を思えば仕方なしです。

 桜を伐ったはいいですが、この場所は人気があるのか、今度はウルシの若木が生えて来ています。
 話によれば、最近新たな亀裂も見つかったそうで、対応を検討しているようでした。
 「杉も人間も一緒なのかね、最近では、周りに肥料を撒いても、あんまり元気になんないんだよ。草ばっかり生えちゃってね……」
 と、管理役のお爺さんは心配そうでした。
 お爺さんの話は素朴ながら、大杉を見て自分自身も育ったのだという尊敬と愛情に溢れていて、心に沁みました。
 まだ大丈夫だと思います、頑張ってください。
 そう伝えるとともに、お陰で大杉に会えることができたという気持ちから、どうしても「ありがとうございます」と何度も言ってしまう自分でした。

 巨樹と人との関わり、ひいては、人とはどういう存在なのだろう? ということを、こういうことがきっかけで考えます。
 巨樹に限ったことではないでしょうが、こういった存在は、いわば鏡なのだろうと思います。

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 比叡山神社。
 祭礼の際には松明を灯し、男たちが相撲を奉納して豊作を願うそうです。
 こちらも地域から大切にされている様子が伺えます。
 右手の樋はこの間壊れてしまったそうで、お爺さんはお孫さんの助けを借りて携帯で写真を撮って、自治体(教育委員会)に報告すると言っていました。

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 解説文。
 昔から和歌に詠まれたりすることもあったという樹だけに、計測の記録が残っているのが面白いです。
 それが正しければ、300年で3メートルほど大きくなっているようです。

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 別れ際の一枚。
 やはり神社と組になっているのが一番絵になる樹、生粋のご神木という感じがしました。
 どうかこれからも末永くお元気で……そう声をかけずにはいられません。

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「筏の大杉」
秋田県横手市山内筏 比叡山神社
樹齢:1000年
樹種:スギ
樹高:43メートル
幹周:11.8メートル

>> 2016/09/18 08:13
秋田の人って、なんて大らかなんでしょう。
ほっこりしました^^
そっと見守り、ほどほどに手を尽くすかんじ。
桜が生えたら、それもいいじゃないか。
でも大きくなりすぎたから、とろうじゃないか。
うるしがはえたけど、大きくないからいいじゃないか。
この神社も素晴らしいですね。
>> 2016/09/18 10:16
ぴよ社長さん>
そう、人当たりの良さというの、東北を旅する楽しみのひとつですね。
自然は豊かで、かつ厳しいけど、それを人が受け止めて仲良くやっている気がします。
自分たちの住んでいる土地を愛してるんですね、きっと。
そういうところに、日本本来の良さを感じるし、自分もそうありたいと思います。
巨樹はそんな広い意味での「風景」を守る、生きる要石の役割をしているのかもしれませんね。
>> 2016/09/19 22:21
「大杉のひとりごと」は心に静かに刺さりますね。
立入禁止などという無粋なものではなく、こういう看板はいいですね。
それにしても管理人がしっかりといらして手入れされているだなんて
地域からとても愛されている杉なんでしょうね。
そのお孫さんもこの杉をずっと大切に思ってくれることでしょう!

こういう姿をした杉といえば、合体杉のイメージが強いのですが、
この杉は一本から二手に分かれた樹なんですねぇ。

あとブログ10周年おめでとうございます!
巨樹、ペンタックス、長文と他にはない楽しいブログだと思います(笑)。
今後も楽しみにしてますよ~。
>> 2016/09/19 23:39
RYO-JIさん>
こういうの、ちょっといいですよね。
こう書かれてしまうと、無視して踏み荒らしたりはできなくなってしまいます。
自分の心がブレーキをかけるんですね。
書きそびれましたが、30代と思われるお孫さんは、久しぶりに大杉に対面したらしく、「やっぱでけえなあ!」と感動してました。
そのお孫さんのさらに娘さんも一緒で、長い世代の凝縮を感じるようでした。
裂け目がでかくなって倒壊なんてことにならず、この先も大杉に長生きしてほしいものです。

長生きと言えば、10年目の我がブログですが(笑)、RYO-JIさんにも本当にお礼を言わねばなりません。
巨樹の記事を始めた時、やっぱりコレはひとりでやってくんだろうなと思ってたので、西からの呼応は思いもよらず嬉しかったのです。
東京がいわば壁となってなかなかその先に行けず、北への探索ばかりなので、西の方の巨樹を見られるのはありがたい気持ちでいっぱいです。
これからも続けていきますので、よろしくお願いします。









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狛です。
スナップ経由の風景写真、巨樹探訪旅、無計画な遠出の紀行文。
スバル・フォレスターが来て、調子に乗っているようです。

・巨樹探訪旅やってます。・
「巨樹を訪ねる」

・写真展(2013.2)・
「旅の、まだ途中」
(Web版が見られます)



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