2017/06/18//Sun.
巨樹を訪ねる 里の与兵衛家のシイ
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K-1 / SIGMA 28mmf1.8 EX DG / FA35mmf2

 昔々のこと……。
 この椎のある土地は、百姓与兵衛という者の持ち物だったそうだ。
 生前、与兵衛は129石を超える豪農であり、塩田も所有して塩作りも手広く行っていたというが、この与兵衛が大きな富を手にした理由については、ひとつ、暗い伝説が伝わっている。
 ……


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 それは、与兵衛が、おのれの繁栄を願って「無間の鐘」をついてしまったというものだ。
 「無間の鐘」には娑婆(現在)と未来を取り替える力があり、ついた者は、現世で望むままの繁栄を手にできる替わり、死後無間地獄へ落ちて永遠に浮かばれなくなるという……。

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 しかし、そういう恐ろしい代物だと知った上で、与兵衛は鐘をついた。
 それほど、人よりも栄えたい、富を我が手にしたいという凄まじい意識がこの男を支配していたのだ。
 鐘が、本来鳴ってはならない不気味な音を響かせた……。

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 それがどんな音だったのか……与兵衛の他に聴いた者がいたのかどうかも定かではないが……ともかく、異変は起きた。
 椎の近くの池から真っ赤な牛が黄金の塊を担いで上がって来るなどという、不可思議な出来事が次々と起きたという。
 人々の耳にはにわかに信じがたいような話だったが、しかし現に与兵衛家はみるみる栄え、転がり込んでくる富には終わりが見えないかのようだった。

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 類い稀な豪農と化し、財産を使い尽くすのも難しいように思えたのだが……与兵衛から数えて七代を重ねた時、蝋燭の灯を吹き消すかのように、突然、その家は没落して消え失せてしまった。
 欲をかいた与兵衛は、無間の鐘をつく時、自らだけでなく子孫の繁栄も欲して「七代良かれ」と念じたのだ。
 まさにその通り、七代に富を与えた後で、鐘はぱったりとそれを断ち切った。
 鐘は約束を果たしたというわけだ……つまり今度は、与兵衛が、その約束を果たす番となる……。

 与兵衛、乗じて富を味わったその七代の子孫たちの魂までも、無間地獄の闇に、永遠に終わらないという虚無の苦しみに呑まれたのであろうか……。
 かつての繁栄も今はもう見る影もなく、それを知るのは、鬱蒼と茂る巨樹となったこの椎の樹だけである……。



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「里の与兵衛家のシイ」
 樹齢:500年以上
 樹種:スダジイ
 樹高:24メートル
 幹周:7.63メートル

>> 2017/06/19 08:25
あああ朝さから こここわい話でしたね。
そんな取引ができる鐘は、今も残っているのでしょうか。
お話を読んだ後に見るモノクロの写真は
何かあったんだろうな…と思わせる1枚です。
>> 2017/06/19 23:18
何故7なのか。
よいことなら8の方が縁起よさそうなのに。
仏教の数字だからかなぁ。六道の先だからか?

…でもオカルトだよねー( ;谷)
>> 2017/06/20 21:57
ぴよ社長さん>
実際大変に不気味な話だと思いました。
樹そのものよりもいわくの方が気になるとは……。
今はもう見る影もなくて、椎も草むらに囲まれていました。
ざわざわ、ざわざわ……という感じで……。
>> 2017/06/20 22:39
さかしたさん>
7ってのは、仏教ではいい数字なんですかね?
祟りも七代っていうし、七大地獄とかもあるし。
奇数とか素数ってのが怪しく思われているのかも。
オカルトですよ〜ダークファンタジーですよ〜。
>> 2017/06/21 00:07
わたしは七生報国思い出しましたな。

あの世に行って三途の川に辿り着くのが7日目とか地獄めぐりするのが7日だったか7年だったか忘れましたけどそんなのもありますしねぇ。
1週間は7日ってこの時代は未だ太陰暦か( ;谷)
>> 2017/06/22 06:42
さかしたさん>
きっと数それぞれに固有の意味があるのでしょうね。
調べると、用語に隠されたいろんな暗号に気づけそうです。
相当強い思いを込めて「七代」って念じてるのかと思いきや、案外シャレのつもりで言ってたりして。
さすがに無間の鐘はそんな雰囲気じゃないでしょうけどね……。
>> 2017/06/23 22:28
日本昔ばなしの一話になりそうななんとも不気味な話ですねぇ。
百姓与兵衛から7代にわたる繁栄とその後の没落を見ていたんですね、このシイは。
人間の欲深さを間近で見ていてどう思っているんでしょうか。
聞けるものならこのシイから話を聞いてみたいです。
ただ、この樹齢500年を超えるシイにとっては、人間の7代なんて
たいした重みじゃないのかもしれませんが。
>> 2017/06/25 11:43
RYO-JIさん>
日本昔話、時折ものすごくシャレになんない、怖い話がありますよね。
僕の恐怖のツボが近いところにあるのか、下手なホラー映画より怖い思いをすることがありました。
実際、長い年月を生き続ける巨樹は、その間近で高速で展開して行く人間の営みを、ずっと感じ続けている存在でもあるんでしょうね。
騒がしい連中だ、とか思っていたりして。
人間は代を重ねても重ねても、一本の樹木のようには生きられないものなのだなあと思います。








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スナップ経由の風景写真、巨樹探訪旅、無計画な遠出の紀行文。
スバル・フォレスターが来て、調子に乗っているようです。

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