2017/08/11//Fri.
巨樹を訪ねる 臥雲の三本杉
nagano1723.jpg
K-1 / SIGMA 28mmf1.8 EX DG / FA35mmf2

 長野市の山中、散らばる集落同士を結ぶ道をくねくねと走り抜け、さらに登ったところに、臥雲院というお寺があります。
 その下方、崖下のようなところに、印象深い杉の巨樹があります。
 「臥雲の三本杉」です。
 このような、変わった立ち姿。
 今回は変わり種の杉に数多く出会う旅です。


 この杉に限らず、お寺や神社にある巨樹を訪ねる時は、もちろんカーナビなどにその施設名を入力すればいいのです。
 実際これは巨樹探訪の最も簡単安穏なパターンであり、ほぼ必ず目的地にたどり着くことができます。
 巨樹がまだ健在であるかは別としても、とりあえず寺社には行き着く。
 しかし今回は、いくら検索しても「臥雲院」が出てきません。
 こんな知らぬ山中の土地で、これは困った。

 ……結局、推測だか霊感だかに従ってうろついていたら、道端で「←臥雲院」みたいな標識に出くわし、無事到着しましたが。
 到着したらしたで、カーナビに「臥雲院」、しれっと表示されている。
 これは一体?
 調べてみると、「がうんいん」(検索結果0件)だとてっきり思っていた「臥雲院」が「がういん」だった……という事実。
 あの、これはわかんない。

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 おかげで時間がかかり、杉の元にたどり着いたのはもう夕方近くでした。
 その風変わりな杉の樹は、緑をたくさん茂らせて立っていました。
 直立というより、だいぶ斜めに。
 近づいてみます。

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 合体樹であることを別に隠そうとしていない、というような堂々たる佇まい。
 三本杉の名の通り、三本(あるいはもっと?)の幹が横に並んで融合したような姿をしています。
 しかし、不思議なことに……傾いている。
 全体としては、ほぼ45度くらいの急角度に見えます。
 もう一度引きの写真に戻って全体を見てもらえるとわかりやすいかも。

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 しかし、急角度な主幹とは別に、新しい枝葉は、地球の地磁気を感じ取っているかのように各々が垂直に伸びています。
 おまけに、斜面の開けた方にばかり枝が密集しているので、普通の杉のような格好にはならず、まるで背中にトゲをいっぱい生やした恐竜……もしくは怪獣みたいな姿だな、と思いました。

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 なぜ片側にしか枝がないのか?
 怪獣の腹側に回って見ると、理由がわかります。
 そして、その眺めはかなりショッキングでもある。
 何か、強烈な力によって引き裂かれたような有様。
 その傷が元で真ん中辺りは白骨化しており、内部は空洞化が進んでいます。
 杉の巨樹にここまでの痛手を負わせるものとは何だろう?

 手がかりは、傷跡の黒い部分……つまり炭化した部分にあります。
 そう、落雷です。
 どのくらい前かはわかりませんが、直撃した雷に引き裂かれたせいで、こちら側には枝が育たなくなってしまったのでしょう。
 
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 面白いのは、背中側に回り込むと、全然違った姿に変貌するところです。
 こちらから見た三本杉は全くの無傷で逞しく、一本の巨大な杉にすら見えます。
 強烈に傾いているのだけはどうしようもなく、まるで木製の幅広い滑り台のようにも見えます。
 反対側のダメージは深刻なものがあると思いますが、この二面性のおかげで、まだ枝をたくさん茂らせて生き延びていけるということのようです。

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 落雷の傷跡はわかっても、この傾きは一体どうしたものか、説明がつきません。
 実は、解説文を読むとその理由がわかるのですが、これがまた奇想天外です。

 ……なんとこの巨樹、元居た場所から移動した経験があるのです。
 しかも、1日のうちに、なんと180メートルも。
 すでにその時には巨大な樹であったため、停止したそのままの角度で固着してしまったということらしく……。

 もちろん杉の樹がノシノシ歩くわけではないので、犯人は地震です。
 1847年にこの地を襲った震災で、もともと崖上にあったものが崖ごと滑り落ちてきたのだというのです。
 あまつさえその後雷に打たれるとは、なんてツイてない大杉だろうと同情もしますが、杉自身は変わった格好のまま、健気に生き続けています。
 とんでもないことが起きるもんだな……とは、巨樹自身が一番思っているのではないでしょうか。 

nagano1726.jpg

 そして、崖上にある眠月山臥雲院。
 斜面を大移動しなければ、巨樹はご神木になれたかも知れません。
 (お寺だから、神木、ではないのですが)
 絵地図にも傾いた三本杉が大きく描かれていました。

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 山中にありながら、立派なお寺です。
 この地域の方々の心の拠り所なのでしょう。 

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 寺の方から三本杉を見下ろす。
 と、不思議なことに気づきます。
 近くに生育している杉の木……なぜかみんな二又、三又の木ばかりです。
 苗のうちに意図してこう植えているのか、自然とこういう風に生えてきてしまうのか?
 三本杉の遺伝子を引き継いでいるのではないかとも思えてなりません。

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 解説文。
 この1847年の地震という記載、どこかで見た記憶があるなと思ったら、「赤岩のトチ」のところで、大橡の下の崖を崩落させた地震と同一でした。
 地形を変え、巨樹を移動させてしまうほどの大地震だったのです。

 三本杉の腹側の空洞化が深刻で、近々倒壊するのではないかと心配です。
 持ち前のタフさは感じることができますが、なんらか、処置も望みたいところです。



nagano1724.jpg

「臥雲の三本杉」
 長野県長野市中条村 臥雲院
 樹齢:600年
 樹種:スギ
 樹高:39メートル
 幹周:8メートル
>> 2017/08/11 21:24
巨樹というのは、生まれた場所で長い長い年月をかけて成長するもの。
それが当たり前と疑いもせずいた考えを覆す巨樹ですね、このスギは。
驚くなんて言葉では済ませられないほどの衝撃です(笑)。
だって地震で180mも移動したうえに、そのまま生き続けているって。
安易な言い方しかできなくて残念な自分ですが、ほんと存在自体が奇跡ですね。
しかも落雷にもあってるだなんて。
波乱万丈な人生、いや樹生にも程があるでしょ。
天災にも負けなかったこのスギ、こういう存在こそずっと大切にしていきたいですよね。
>> 2017/08/13 00:48
あ、これは善光寺地震。
本堂の柱があちこち歪んじゃったと言い伝えられている(実際は違うみたいだけど)。
樹が動いちゃうのも納得です…。
>> 2017/08/13 20:43
RYO-JIさん>
こんなすごいヤツもいるんだよ! という巨樹世間の広さを知る逸物です(笑)。
実際格好も個性的ですし、わしゃ、そういうわけでこうなったんじゃ、ご覧の有様じゃ、という。
そう、おっしゃる通り、「波乱万丈な樹生」、それにつきます。
他の巨樹が知らないことを色々知ってそう。
こういう、個性的な樹が大好きです(笑)。
>> 2017/08/13 21:04
さかしたさん>
そう、有名らしい善光寺地震というやつだったようです。
そうですか、善光寺でもそんな被害が(だからそう言うのであろう)。
なになに……マグニチュードは7・4、死者8600人、全壊家屋21000軒!?
やべえ地震だったぜ、みんな大丈夫か? って見てみたら、こんな樹が180メートルも移動しとる。
ものすごい震災だったようです。








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スナップ経由の風景写真、巨樹探訪旅、無計画な遠出の紀行文。
スバル・フォレスターが来て、調子に乗っているようです。

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・写真展(2013.2)・
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