2018/02/21//Wed.
巨樹を訪ねる 石徹白の大杉
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K-1 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 白山中居神社から7キロ。
 細い林道のような道を進み、さらに420段の石段を登ってへとへとになった先、これまで見たことのないような姿の杉が目前に現れました。
 「石徹白の大杉」。
 これこそが白山中居神社の御神木です。

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 守るように周囲を囲む木々の間にその気配を感じながら、息を切らせてその前に走り出て……一瞬、ハッと息を呑む。
 当日、朝は小雨でしたが、とてもいい天気に晴れ、さんさんと降り注ぐ日光の下、その杉はあまりにも静かに佇立していました。

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 明らかに単幹ですが、これまで色々と見てきたどの杉の巨樹とも似ていない姿。
 そして、この幹の色……日光を反射して光って見えるほど、白い。

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 全体像を目の当たりにする。
 おそらく、もっと高かったものが雪などで折れたか、樹高はさほど高くはありません。
 あちこちから枝を伸ばしているが、ほとんどが折れ、死んでいるように見える。
 そして樹皮も、先に見て来た浄安杉と同種の樹であるとは思えないほど、大部分が白骨化・白化し、石灰岩の塊を削った彫刻のようにさえ見えます。

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 樹齢は1800年という高齢。
 雪に耐え、風に耐え、あらゆる生存の手段を使い尽くした、1本の巨大な裏杉のたどり着いた姿がこれなのです。

 ここまで、このように生き抜いた樹は無いのではないか……そう感じさせる、まさに巨樹界のレジェンドのような存在です。
 その通り、国の特別天然記念物に認定されており、およそ全国の巨樹を取り上げた本ならどれにでも載っている。
 いちどぜひお目にかかりたいと思い……それが今回岐阜ルートを選んだ大きな理由でもありました。

 そしてついに念願が叶った。そう素直に喜びがこみ上げて来ました。
 巨樹の前に立った時、どんな感情を抱くのか?
 それがその樹に応じて千差万別であるがために、この探訪がやめられないのですが……この杉は、どんとそこに存在しながらも、威圧するような感じは少しもありませんでした。

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 確かに巨大で、異形でもある。
 厳しい環境の中で1800年も生き抜いて来た強い樹でもある。
 それなのに、同時に不思議なくらい優しい感じがする。
 その疑問の答えを、この樹の裏側で見たような気がしました。

 背中がわは、正面と比べればまだ白骨化の進行が遅く、天をついて伸びている枝も裏側に付いています。
 そしてその根本には……多種多様、色とりどりの植物たちが、まるでこの杉を慕うかのように身を寄せていました。
 この姿や色彩を見ているうち、杉がこの深い山の長老として山中から尊敬されているのだろうと感じました。
 
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 着生植物も多い。
 白くなった身に遠慮もなく乗っかって来ている。
 しかし、老いたる大杉は、もはやそれすら受け入れているかのようにも見えました。

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 そうだな……この杉は、とても偉大で優しいお婆さんなんじゃないかなと、そんな印象を受けました。
 季節柄、着生したカエデ科の植物は目の覚めるような黄色に紅葉しています。
 青空に映えるその色で彩ってもらって、むしろ杉は喜んでいるのかもしれない。

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 こんな杉は確かに他にはない。
 出会えたことで、こちらまで気持ちが暖かくなってくるかのようでした。

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 たどり着いた喜びも相まって、感情移入してしまいました。
 巨樹としては、幹周14メートルとされ(環境省データベース値、現地の案内板では13.1メートルとある)、列強の巨樹ぞろいの杉の中でも全国第5位の大きさを誇ります。
 近づけないので直に比較を撮ることはできませんが、確かに太い。
 計測が確かなら、あの筋骨隆々とした浄安杉よりも1メートル前後も太いということになるのです。

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 書籍に、ヒューマンスケールとの対比を撮ったものを見つけました。
 ものすごい大きさです……。
 本の発行は20年ほど前ですが、撮影時期は不明。
 当時から正面の大半が白骨化しているのが見て取れます。
 周囲の柵もより広い範囲に改修されていると思います。


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 尊い杉でした。
 とはいえ、先にお詣りしてきた白山中居神社から7キロも先という、なぜそんなところに御神木があるのか?

 そこに向かう人は必ず不思議に思うはずですが、答えは簡単かつ驚くべきものです。
 つまり、ここまで含めてが全て、白山中居神社の境内であるからなのです。なんという広大さ……。
 この杉も、普通の神社の御神木が境内にあるように、そのお決まりの外には出ていないのです。
 そしてちょうどこの杉の先からが、白山そのものに至る登山参拝道になっている。
 白山参道の入り口を守り、境界として存在する杉なのです。

 ここから白山本体への山頂までがまた実に25キロとのこと。
 杉へ至る石段で息を切らしているような素人には、とてもチャレンジできない厳しい道のりです。
 信仰とは楽なものではないのだと思い知ります。

 容易には至れない神の領域に近づかんとする者たちには、この杉の特異な姿はまたいっそう神々しく見えるのではないでしょうか。
 永く、さらに永く生きてください。


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「石徹白の大杉」
 岐阜県郡上市白鳥町石徹白 白山中居神社
 樹齢:1800年
 樹種:スギ
 樹高:18メートル
 幹周:14メートル
>> 2018/02/21 16:48
1800年。凄いなあ…人間が土器作ってワーワーやってた頃から生きてるなんて想像できません。この乗っ取られて紅葉している様がいいですね。1本の木としての役目を終え、山の一部に還り始めているように見えます。
>> 2018/02/21 22:14
1800年。
それがどんな姿形であろうと、いまだ存在しているだけで奇跡。
マスコミなんかは引退したスポーツ選手を誰彼関係なく簡単にレジェンドと言うのに辟易してますが、
この杉は巨樹界のレジェンド、まさにそう呼ぶに相応しい存在ですね。
この杉の存在は私も少し知っていました。
手持ちの本で見たんですが、その姿に大いに興味を持っていたんです。
その杉を狛さんの写真と言葉で堪能できて嬉しい(笑)。
神社のスケールも石徹白の大杉のスケールも感動モノ。
その異様な姿にも関わらず、裏側の色とりどりの植物たちを見るとほっこりしますね。
いや、ほんと懐が深い。
恐れ多いですけれど、私もそんな存在になりたいと思える見事な杉です。
>> 2018/02/21 23:55
1800年の杉見て全然色が入ってこなかったのは何故だろう。
杉に圧倒されちゃったのね、きっと。
もう一度見直しましたよ。前回の記事も含め。
前回も色が全然入ってこなかったんですよ。ちょっと自分の目も疑った方がいいのかもしれない( ;谷)

石徹白の大杉を含め白山中居神社はおまえ達を受け止めてやるぜ!という空気感がハンパないですね。
修験場に向かう道に感じ取れる空気感で、そら神さまも仏さまもいらっしゃればそうだよなと思ったりするんですけどね。
くくりひめちゃんおまとめの神さまだし。
だからね、逆に怖く感じたりするんですよね。弾かれたらどうしようって。

どんなところか調べてたら女性ひとりで行かない方がいいってぽろぽろ出て来た。
先人の言うことは聞くことにしているので誰かと行くことにします。現地調達かなぁ…(´・ω・`)

そこに山があるから登るんだってほんとそうだね。
信仰は山にあることが多い。
記事ふたつ読んでの私感でした。
>> 2018/02/23 07:29
to-fuさん>
人間の歴史全部の長さをひとつの命だけで生き抜いてしまうという、ほんと我々には想像できないものがありますね。
僕も同じことを考えました。
山の声を聞きながら、ゆっくりと山そのものになっていってる樹なのだろうと感じました。
いい樹です。
>> 2018/02/23 08:31
RYO-JIさん>
この姿は本で見てもやはり目を引きますよね。
とてもいいタイミングで見られて良かったです。

ランクづけするのもどうかと思いますし、天然記念物指定にしても「?」と思うこともありますが、この樹はまさにレジェンダリークラスと呼ぶにふさわしいと感じました。
あくまで実際前に立って感じたインパクトでのランキングなら、いつか作ってみたいかもしれません。それこそピュアなランキング。

御神木というと、どこか神仏との結びつきを感じるとか、そのもの自体がそれに近づいているような気配も感じるようですが、この樹は森とか山そのものでした。
もう一度会いに行きたい樹が増えて嬉しかったです。
すごいところにあるので、見に行くとなるとまた一大旅行になってしまいますが(笑)。
>> 2018/02/23 09:02
さかしたさん>
白山中居神社からの一連の流れは、写真的に言ってもモノクロで仕上げるといいような印象はありましたね。
まだ1度目の訪問で驚きばかりを持ち帰った感じで、カラーになりましたけどね(笑)。

登山ができればこの杉の先にも踏み込んでいいかもしれませんが、僕なぞはここでもう充分満足です。
白山中居神社は女性一人はいかんですか。
いやあ、でも是非行ってみてもらいたいところです。辺境ですが。

こんな深いところにまで至った人がいる、だから自分ももっと頑張ろうという、自分の強さ弱さを直に感じ取ることができるところが、山に対する良さかなと感じました。
>> 2018/08/10 20:44
改めて狛さんの石徹白評を読み返したくなったのですが、自分が感じたことと非常に似ていてニンマリしてしまいました。そうそう、分かる分かる。みたいな。

そしてこの紅葉の表情もいいなあ。再訪するなら秋かな、なんて思いました。こうして狛さんのログを読み返していてもあの神社からの悪路(大野方面からのアクセスでしたが、石徹白ダムから神社までの山道も負けず劣らずの悪路でした。)が脳裏によみがえり、今すぐにでも再チャレンジしたくなってきます。本当、いつまでもあの姿のまま白山の山奥で待っていてもらいたいものですね。
>> 2018/08/11 07:45
to-fuさん>
場所が場所ですので、感動を共有できた感じ、とても嬉しいです。
夏の姿の緑が生き生きとした感じも実際目で見てみたいですが、to-fuさんの話、アブの大群にはちょっと怯みますね……。笑
冬の姿は手持ちの本にあり、雪の中に白い姿で立つ様はますます異世界感が強まって……ああでも、雪が積もる中、あそこまで行ける気がしない。
再訪、したいですねえ。
あの小冒険感も……まさに巨樹の醍醐味です。








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