2018/06/02//Sat.
巨樹を訪ねる 専福寺の大欅
IMGP9866.jpg
K-1 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 勝山市とともに福井県の一番膨らんだところ……要するに多分に内陸・山地的性格を帯びている大野市。
 市街地から少し走り、風景に田んぼや山陰を眺めることが多くなって来た頃合い、真名川という川のそば、専福寺というお寺に立派なケヤキがあると知り、向かいました。
 一緒に走ってくれたRYO-JIさんとも同意見だったのですが、その日訪ねる巨樹リストの中でも、実は期待値があまり高くなかったのがこのケヤキ。
 理由は後にも書きますが、しかし、現地に到着した車窓にその姿を捉えた瞬間から我々の目は虜になり、口は唖然とし、その後このケヤキの全体像を見れば見るほど、何度でも自らの早とちりを恥じることになったのです。
 「専福寺の大欅」。
 幹周11メートルにもならんという屈指の大欅です。

IMGP9884.jpg

 だいたいにおいて、幹周囲11メートルのケヤキの巨樹というのがどのような姿になるか、それを前に小さな人間はどのような衝撃を受けるか、まるで想像力が足りていませんでした。
 先達の方のサイトとか本の小さな写真を眺めただけで、うーん、幹周のデータはすごいけど、傷んで切られてしまった樹なのかあ、しかしまあ、最後の補給地点(ごはんポイント)の大野市街から近いわけだし、腹ごなしに見に行こうかね……なんて失礼なテンションだったので、大欅登場のインパクトは倍の倍で16倍に!(欅巨樹算数)
 
 図らずもお寺の門前の細道を車で横切ることになったのですが、その時でさえ、思わずブレーキを踏んで、1、2秒動けなくなってしまった……。

IMGP9873.jpg

 幹周11メートルのケヤキの巨樹。
 そこまでの規模に育つ樹種といえば、楠、銀杏、そして杉です。
 他の樹種でその規模のものがあったとすれば、まず枝分かれした合計値で計測しているか、合体樹。
 ですが、楠や杉にせよ、間近に立った時にこれほどのインパクトを与えるものは少ないのではないでしょうか。

IMGP9890.jpg

 楠はもっとグニャグニャと根を発達させるので、時として根なのか幹なのかわからない不定形ぶりを見せる。
 杉は、裏杉であれば主幹を失って籠状になるし、ズドンと背の高い表杉でもどこか柔らかそうな面持ちをしている。
 対して欅は、ほとんど太さを変えずに岩山のような幹を立ち上げ、いかにも硬そうで超絶な重量を想像させます。
 この迫力、圧迫感……とても写真で捉えられたとは思っていませんし、ここから感じてくれというのもおこがましい。

IMGP9879.jpg

 そう、撮っている最中から、これは全然伝わらないな……と、どこかで諦めているような感がありました。
 写真が下手だからというだけではなく……じゃあテキストで書けばいいじゃないと言われたって、半笑いで肩をすくめるしかない。
 前に立つと、もう、ただ途方に暮れるしかないという感じなのです。

IMGP9880.jpg

 なので我々としては、せめて存分に途方に暮れることにしました。
 写真のタイムスタンプから振り返るに、40分強途方に暮れていたことになります。
 せっかくだから見て行くかあ……というノリで来た我々の心の動きというものを、ここにご想像頂ければ幸いです。

 周囲にこれ以上に高い樹木や構造物がないので、落雷か強風で大枝が折れたのだと思います。
 傷んだケヤキには菌類がつくので、そこから腐っていったのでしょう。
 安全のためか、昭和59年に伐採が行われ、樹高は8メートルほどになってしまった。
 空洞化した樹体内に雨水が入らないように屋根がかけられていて、樹らしくない変な姿に見えます。
 せっかくまっすぐ育ったのに、幹周の数値より樹高の方が小さくなってしまうなんて、樹としたら不本意に思っているかもしれませんね。

IMGP9907.jpg

 しかし、ボロボロの体でかろうじて立っているだけなのかと思いきや、これも参照物からの印象とは違って、豊かな緑を広範囲に茂らせていました。
 倒壊さえしなければ、まだまだこのまま生きそうにも思えます。

IMGP9892.jpg

 大きすぎて、お寺の門と比較するしかないような樹です。
 立派なお寺で、門だって大きいんですが……ケヤキがそれを小さくしてしまっています。

 途方に暮れていると、お寺のお仕事をされていると思しきご夫婦が出て来られ、少しお話しすることができました。
 こんな姿になってしまって……と、気遣っておられるようで。
 それでも、巨樹が好きでという話をすると、「柵の中に入って撮ってもいいよ」と特別に勧めて下さいましたが、この際、柵を越えないのは樹のためを思ってのことであるので、ありがたく辞退しました。

IMGP9901.jpg

 主幹のすぐそばから、まだ細い若木が育っていました。
 葉からするにこれも同じケヤキ、とすれば二世ということになるでしょうか。
 見れば、大欅が意図したことなのかどうか、根は繋がっているようです。
 育って行くに従って新たな幹になって、後世に存続して行くのかもしれない。
 その姿をもう我々は確認することができない定めですが、植物は強い、すごい話だな……と今回も感嘆するのでした。

IMGP9862.jpg

 説明文。
 近くに小学校跡地の碑もありました。寺子屋からの流れだったのかもしれません。
 このお寺自体が大ケヤキ目当てでここに移ってきたということが明記されているのは驚きです。
 寺には文献が残っているでしょうし、とすれば、樹齢800年というのはあながち誇張ではなさそう。
 ここまで樹齢の裏付けが得られるというのも、なかなか珍しいかもしれません。

 余談ですが、ウィキペディアでケヤキの項を調べると、ケヤキの巨樹の写真として、「野間の大欅」とこの「専福寺の大欅」が載っています。
 異存は無い、まさに大欅の代表選手といって差し支えないなと思うのでした。

 これからもお元気で、と願うのと同時、もう一度見に来たい樹だとも思いました。
 この巨躯に圧倒される感じは、まさに巨樹の醍醐味であり、知ると癖になる。
 そしてまた、巨樹というのは情報で測れるものではなく、実際にこの目で見ないと意味がないなあ……と、また思い知らされたのでした。


IMGP9895.jpg

「専福寺の大欅」
 福井県大野市御給31−3 専福寺
 樹齢:800年
 樹種:ケヤキ
 樹高:8メートル
 幹周:11メートル
>> 2018/06/04 20:56
ほんと、ついでに寄るか的な感じだったのに驚きましたね。
失礼にも程がある我々でした(汗)。
野間の大ケヤキと双璧をなすような存在だったとは・・・。
実際に野間の大ケヤキに引けをとらない非常に価値あるケヤキでした。
遠方からわざわざ見に行くべきとさえ思いますよ、これは。
にもかかわらず、下を向いているオジサンがいますが、その理由は私の記事にて明らかになります(笑)。
>> 2018/06/04 22:32
このケヤキは僕もよく巨樹サイトで見ていたのですが、正直優先順位は高くありませんでした。
しかしこれは。やっぱり長年生きている木の持つオーラでしょうか。小浜の九本ダモを見た時にも感じましたが、朽ちようと折れようと決して消えない何かがありますね。年老いて尚眼光鋭く背筋もピシッとしている柔道家の爺さんを想像しました。

野間の大ケヤキの辺りもケヤキの元に人が集まって出来た集落なのだそうですが、川や海のように人間の暮らしの利便性と直結するわけでもないのに巨樹の元に人が集まったって何だかロマンを感じて好きです。
>> 2018/06/05 13:38
RYO-JIさん>
僕はそうだったけどRYO-JIさんは違うかな……と思ったら、同じような感じだったので、おかしかったです。
しかし、だからこそ余計びっくりできて、足を惜しまず訪ねることの重要さを味わえましたよね。
10メートル以上の規模のケヤキというのは、本当、樹というより重厚な構造物、場所という感じがしますね。
圧倒される存在感は、ケヤキならではでした。

おっと、伏線ですか!?(笑)

>> 2018/06/05 13:46
to-fuさん>
to-fuさんの優先度も低かったことが判明(笑)。
そう、内部は空洞になってしまって、支柱がど真ん中に刺されてるほどなんですが、我々をのけぞらせる迫力は十分にありました。
おっしゃる通り、その気配だけで、全く動ぜぬ、寺の門よりもよほどどっしりと構えているように見えるのです。

寄らば大樹の陰とは本当ですね。
杉や欅の場合、寺社が建て替えの用材として植えたり、寄ってくるということなのでしょうが、それが自然と集落の形成に結びついたりもしていますね。
大きな樹を眺めていると安心したり、心が豊かになったりと、それは自分でも感じるので、自然な流れだと思います。

で、そうこうしているうちに樹の伝説が発生したり(お箸ぶっ刺し)、イメージさせる地名ができてしまったりで結局1000年も切るわけにいかなくなってしまうという。笑








ブログ管理人にのみ表示を許可する

[TOP]



ブログランキングにも参加しています。
気に入った写真や記事があったら、押していただけると嬉しいです。

にほんブログ村 写真ブログ スナップ写真へ にほんブログ村 写真ブログ 建物・街写真へ にほんブログ村 写真ブログへ
プロフィール

狛

Author:狛
狛です。
スナップ経由の風景写真、巨樹探訪旅、無計画な遠出の紀行文が色々あります。
いつもどこかで何かしら変なことが起きます。

・巨樹探訪旅やってます。・
「巨樹を訪ねる」一覧



・11日間、2600キロ超。
 行き当たりばったり旅の紀行文・
「西日本長距離車旅」



・写真展(2013.2)・
「旅の、まだ途中」
(Web版が見られます)



カテゴリー検索と表示



最近の記事とそのほか
最近のコメント
月別アーカイヴ
リンク
道具

HDPENTAX-DFA28-105mm 
K-1 
DP2Merrill 
OtherCamera 
Flektogon35mmf2.4 
K-7 
DA21mmf3.2 
Sigma28mmf1.8 
MX-1 
FA35mmf2 
CZ・Ultron50mmf1.8 
OptioA30 
Distagon35mmf2.8 
Flektogon20mmf2.8 
Pancolar80mmf1.8 
ТАИР-11А135mmf2.8 
smc-m150mmf3.5 
EBC・Fujinon(55mm&135mm) 
smcTakumar28mmf3.5 
Travenar50mmf2.8 
smc-m50mmf1.7 
smc-m28mmf2.8 
smc-m20mmf4 
Pancolar50mmf1.8 
smcTakumar105mmf2.8 
SuperTakumar35mmf3.5 
ESPIOmini 
smcTakumar35mmf2 
Helioplan40mmf4.5 
SMC・Takumar55mmf1.8 
FujicaDate 



www.flickr.com
This is a Flickr badge showing public photos and videos from coma222. Make your own badge here.
copyright (C) 2006 アンダー・コンストラクションズ all rights reserved. [ template by 白黒素材 ]
//