2018/06/12//Tue.
巨樹を訪ねる 岩屋の大杉
fukui1891.jpg
K-1 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 心を平静に。
 息を深く吸って。
 「岩屋の大杉」と対面する前に。


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 勝山市の道の駅から車で15分ほど走り、主要道路から山めがけて4、5キロ入ったところ、目印は「岩屋観音」。
 一本道なのは察していたので、また戻ってくるわけだし、と、RYO-JIさんに僕の車に乗ってもらって走ってきました。
 どうやら近くにキャンプ場もあるらしく、そろそろだと思いますよ、そんなに酷い道じゃありませんでしたねー、か何か話していた時、
「うわっ……」
 RYO-JIさんが深く息を吸い込んだきり、たっぷり三秒、吸った息を吐くのを忘れたみたいに沈黙しました。
「見てしまった……」
 何を。

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 何を……?
 って、なんだありゃあ!?

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 岩屋観音のダイナミックかつ神秘的な境内をまっすぐ行けば、程なくして対面することができます。
 これが、「岩屋の大杉」!
 今回の福井巨樹行のメインターゲットであり、クライマックス!
 
 その姿は異形、そしてその巨大さは驚異そのもの。
 我ながら、なんてチープな言葉だろうと呆れ果てる……だけど、そうとしか言いようがない。
 こんなもの、何かに例えようもない!

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 さあ、深呼吸、少し落ち着いて……落ち着けって言ってんだろう!
 とか、キレるかと思いきや、人間、本当の驚きに直面すると静かになるものらしいです。
 僕もRYO-JIさんも、しばらく呆然と立ち尽くしたのち、言葉を交わすでもなく散開し、相手の出方を伺うような慎重さでカメラを向けました。
 
 ゲームのシナリオを書いていた頃、「異形の怪物」っていう笑い話? 警句?があって。
 新人サンが決まってやるミスなんですが、企画書やプロットに敵キャラを書くとき、「魔界の門から出現した異形の怪物たちがーー」なんて書いてしまう。
 異形の怪物って何よ? どんなやつよ? ドラゴンなのゾンビなの? 目が何個あって武器はなんなの?
 と、そんな形容はまるで意味をなさない。
 これからソレを自分たちで作ろうってのに役立たずの言葉書いてんじゃねえよ、って戒めなんですが。
 こういうのをやらかしてしまうと、大抵怒られるか、見せしめに晒されるもんです。

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 しかし……人間、目の前にあまりにも驚くべき姿のモノが現れた時、一体どうなるか。
 言葉を失うんです。
 言語中枢が麻痺したみたいに極端にボキャブラリーが貧弱になって、すげーすげー、やべえやべえと連呼した挙句、うーんうーんとか、意味のない音を出す変な袋みたいな存在に成り下がってしまう。
 僕も色々と巨樹を見たつもりでいましたが、これ以上に怪物じみた……「異形の怪物じみた巨樹」を見たことは……ないかも。
 おそらく、巨樹をそれなりの数見てきた人ほど、このショックは大きいのではないでしょうか。
 本物の怪物。
 ……やっぱ俺ダメだわ、いくら書こうとしても言葉が上滑りしてしまう!

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 どこを見ても驚くことばかりで……。
 五又に立体的に分岐し、あるものは地上すれすれまで下ってから垂直に天を目指し、その付け根は岩のように盛り上がり……。
 幹また幹に正気を奪われるのを何とか回避しようと、幹周16メートルとも17メートルとも言われる根幹部を確かめようとするが……。

 ダメだ。
 斜面のえぐれた部分が全部、樹でできてる!
 樹でできた岩窟にお地蔵さんが鎮座してしまってる!!

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 (枝に寄生したヤドリギのアフロヘアーめいた緑を眺めて、呼吸を落ち着けているところ。)

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 しかし、いつの間にか、怪物の懐に入っている!

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 慌てて脱出。
 ひとつとして同じ姿のものが無いように思える裏杉ですが、改めてその造形の豊かさ、そして異常さを思い知らされます。
 人間が想像し、把握できる形状なんて、自然界に実在するバリエーションから比べれば、全くスケールの小さいものでしかない。
 造形作家でもなんでもないけど、なんだか敗北感すら感じました。

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 おそらく、この盛り上がった筋肉の塊のような質感が、見る者をまた過度に興奮させるのでしょう。
 どう見ても、この樹はもの凄く力んでいる。
 ウロになっているところもあるが、大きく展開した枝の付け根も塊のようにどんどん膨れ上がって埋め尽くされ、それゆえになおさら巨大に見えるし、実際ものすごく巨大。
 莫大な質量を常に支え続けながら、ダイナミックに躍動している。
 例えがようやく浮かびましたが、観音を護るつもりでこちらを威嚇している金剛力士のようです。
 観音を金剛力士が護るなんて構図、聞いたことないですがね。

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 怪物と、人間。
 大変な迫力、そして信じがたい形状ですが、単にぐねぐねとした異常さを感じさせるのではなく、しなやかかつ剛健というところに、ポジティブな気を感じます。
 だからこそ、恐れず我々は近づくことができました。
 そのあまりのパワフルさは、驚きが収まってくると、かっこよくすら思えてくる。

 とても写真で捉えきれるものではない……。
 実像の巨大すぎる巨樹に対して容易く敗北してしまう僕の写真ですが、この樹の場合、正確に3Dスキャンして、立体モデルを作って欲しいと思いました。
 そしたら買う!
 ああでも、大きさはどのくらいがいいんだろう。
 このくらい、このくらい……なんてやってたらどんどん大きくなってしまうはず。
 大きければ大きいほど良くなって……結局このデカさになるのかよ!


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 解説文はなく、観音堂脇に立てかけられた(撤去された?)杭がデータを示しています。
 「白山神社のカツラ」を福井県最大の巨樹であると書きましたが、実際そう書いてある書籍もあるわけで、その場合、「岩屋の大杉」は合体樹としてランカー扱いされていないのでしょう。
 集団戦法のカツラを認めて、これは認めないの? というのはともかくとして……笑。

 まあ、どうだっていいんですよ。
 もっと言えば、16メートルだろうが17メートルだろうが、「実際にレーザーで測ったら10メートルでした」でも別にいいんですよ。
 目の前に立って感じたあの迫力は、数字を知っていたから感じられたというものではないんだから。
 むしろ、数字のことなんか完全に頭から吹っ飛んでいました。
 その存在を前にすれば、すべての数字も言葉も及ばないということがはっきりわかる。
 そうであるのが本当の意味での「巨樹」というものであろうとも思います。


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 立ち去りぎわ、RYO-JIさんが、道からも大杉を仰ぎ見てみるべし、と誘ってくれました。
 そう、僕は運転していて見ることができませんでしたが……ウワー……これを不意に、助手席のRYO-JIさんは目撃してしまったわけですか。
 正気度と人間性を奪われる眺めです、確かに。
 どこがどうなってるのか、一目では全く理解できず、「ただ事ではない」ということだけが全力で体当たりをかましてくる。
 まあ、そんな気軽に理解しようとするのが間違いなんですが。

 自然の純粋な凶暴さと異常性を清々しい形で叩きつけてくるような、無二の巨樹でした。
 見に来られてよかった……けど……ああ疲れた……。
 (興奮しすぎた我々は、途中、一度中断して別の巨樹を見に行きました。そうでなければ、帰ってソースかつを食って寝込んだだろう)


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「岩屋の大杉」
 福井県勝山市北郷町岩屋 岩屋観音
 樹齢:500年
 樹種:スギ
 樹高:30メートル
 幹周:16メートル

>> 2018/06/13 21:03
とうとう来ましたか!
ラストのモノクロの1枚で背筋がゾゾっと来ました。モンスターですね、これは。
というかこの根元の左側にちょこんと立ってる棒、大杉と比べると割り箸みたいなのにRYO-JIさんよりデカいじゃないですか。何なんだこいつは。全く縮尺が想像できずちょっと混乱しています。写真から伺える複雑怪奇な造形だけでも言葉を失いますが、これを実物を見てしまったら失神モノなんでしょうねえ。

勝山のこの「岩屋の大杉」から少し北上すると石川県に「御仏供スギ」という変態もいるので、何とかして1回の工程でこの2本を回れないかと模索しております。やっぱり1泊しないとキツイよなあ。
>> 2018/06/13 21:53
これはもう・・・ほんとにどう表現してもチープになってしまいますよねぇ。
それならいっそのこと、写真だけで記事を掲載した方がいいのかとも思うくらい。
しかし残念ながら、写真でも表現しきれていない(つまりチープ)なので、
やっぱり幼稚な言葉を羅列しつつ・・・しかないと思ってます(笑)。
自分ごときが巨樹同士を比較するのは失礼だとわかってはいますが、
これは正真正銘の怪物でした。
>> 2018/06/14 17:03
to-fuさん>
来ました来ました、クライマックス!
どうやら初見アタックの直撃を受けたのは僕よりもRYO-JIさんの方だったように思いましたが笑、それでも観音堂で隠れきれないあの巨大な気配には、姿が見える前からゾクゾクしました。
異形もいいところ、その形になることでより強く生きているかのように思えてしまうところがすごい。
間違いなく、ただの樹であることをやめてしまった樹であると言えます、これは……。
編集中、写真で全然表現できない! だめだこりゃあ! と頭を抱えましたが、本当にデカいんですよ(やはり言葉が馬鹿になるなあ……)。

案外アクセスしやすいところにあったので、ぜひ勝山に行かれて、体感して頂きたいです。いや、もう、写真も言葉も役立たずで、それしか方法がなく……このままでは僕がアワアワとタコ踊りしてるだけみたいだから!笑
先に見た者として、to-fuさん驚愕の瞬間に立ち会って「どう? すごいでしょ?」とスカしてみたいけど……どうせ僕もまた走り寄ります。

「御仏供スギ」、気になりつつ、能登半島の時は先端部の輪島・珠州市から攻めたので、見てません。ちょうど今年の巨樹フォーラムが石川だったので、皆で「御仏供スギ」に寄ったツアーもあったらしく、載ってました。
石川も結構強者が潜んでいますよー。風景もいいし、能登半島の海岸線をドライブするだけでもまた行きたいくらいです。
>> 2018/06/14 17:33
RYO-JIさん>
ですよねえ……しか、言いようがねえ……。
叩きつけられるような存在感というか、結構打ちのめされる感があるというか。
あのよくわかんない疲労感はすごいです。
本当、これを最後にしようというRYO-JIさんの提案万歳。というか、最初にこれ行こうとしてた僕は一体何を考えてんでしょう。グランド10周して来ます!!
裏杉だけでなく、どの巨樹も同じものは二つ無いんですよね。これは確実。どれも大事にすべきと心に刻んでいるはず。
ですが、こうした純粋な圧倒を感じられるのはやはり何物にも代えがたい、そこは素直にやるのが一番だと思います!
また見に行きたいですねえ、いいなあ、これ……。








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スナップ経由の風景写真、巨樹探訪旅、無計画な遠出の紀行文が色々あります。
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・巨樹探訪旅やってます。・
「巨樹を訪ねる」一覧



・11日間、2600キロ超。
 行き当たりばったり旅の紀行文・
「西日本長距離車旅」



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「旅の、まだ途中」
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