2018/06/15//Fri.
巨樹を訪ねる 飯盛杉
fukui1912.jpg
K-1 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

(まあ、まあ、ちょいと落ち着くがいい……)

 「岩屋の大杉」の途方も無い迫力に慌てふためく小さな人間たちを、そう諭すかのように佇む巨樹がありました。
 驚異の存在から100メートルほどか、斜面を登って行った先、「岩屋稲荷」の傍にそびえ立つ「飯盛杉(いいもりすぎ)」です。


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 いやいや、こちらも結構な体格。
 目通り周囲は7メートルということらしいですが、先細りにならず、根幹そのままの太さで高く育っている格好は、重量感があって見応え十分です。
 おそらく地上10数メートル上ったところでも、しっかり周囲7メートルを維持している。
 巨樹好きを自称するならば、飯盛杉だけでも見に来て損は感じないはず。

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 手前であんなモノを見てしまい、ちょっと興奮しすぎて疲れてしまった。
 いかんいかん、まだ撮り切れた感がないのに、このままテンションに流されてしまっては、写真全部ブレてましたとか、そういうのあるよ? 
 と、自分を落ち着かせるためにわざと一旦その場を離れて「飯盛杉」の元へ退避して来たのです。
 当然、少々の小癪な下調べから、こっちはあまり「すごくない」ことを知っている。だから……と。

 なんと失礼なことか。
 そんな、小さな参考写真の印象よりも、ずっとずっと立派な巨樹だったというわけです。
 高レベル巨樹地帯。

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 どうしたってあの怪物と比較され、地味だと言われてしまうのは仕方ない。
 しかし、この飯盛杉も、そこらに植林されているただの杉とは全く雰囲気が違います。
 いや、御神木クラスに当てはめてみても十分張り合えるし、個性的だ。

 目の当たりにして感じたのが、もしかすると「岩屋の大杉」よりもこちらの方が年長なのではないか? ということ。
 説明文などがなく、「岩屋の大杉」=500歳、「飯盛杉」=300歳以上、とされていますが、両者の雰囲気は対照的。
 この落ち着いた感じといい、太く高く育った形といい、より長い年月を感じさせる樹だと思います。

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 五又のモンスター杉との縁はわかりませんが、この杉もまた裏杉のタイプには違いない。
 限りなく垂直に身を立てていますが、どこかでその性を隠せなくなるのか、地上10メートルほどでいきなり分岐し始める。
 しかし、いや、俺はまっすぐ生きるんだよ、と、その意思も捨てきれないようで……その辺はもしかしてアイツを意識していたりして……分岐しつつもまっすぐ天を指している。
 これらの要素が重なって、直線的でありながら、ユニークな姿になっています。

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 冬の深い雪のせいか、歳には勝てないのか。
 何箇所も枝が折れた跡があり、緑をつけているのは最上部だけ。
 枝張りはかなり狭くなってしまっています。

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 それでも、その老いた感じがまた様になる樹だと感じました。
 本当に、斜面下のクライマックス巨樹とは正反対だと言っていい、こちらにはこちらの良さがあります。
 ここへ来たら、この好対照を楽しむべきですね。
 こっちの方が御神木らしくて渋くて好きだと思われる方もおられるんじゃないでしょうか。
 
fukui1911.jpg

 そんな飯盛杉。
 その名にどんな意味があるんだ? と、「飯盛」という言葉に嫌な予感を覚えつつ……

 「弘法大師が諸国行脚の途中、ここに立ち寄られ、食事をとった。その後、箸を左右に1本ずつ地に挿したのが大きくなったとする伝説があるから。」

 あー! ここでもお刺しになられましたか、空海サン!
 しかも一膳を半分ずつ神社の左右にぶっ刺すという遊び心! 何考えてんだ。

 箸は2本なので、神社の反対側にも同じくらいの巨樹があったということらしいが、そっちのは70年ほど前に火事で失われてしまった。
 「ある人がテンを獲ろうと追って来たら、テンは杉の根元に開いた空洞内に逃げ込んでしまった。ならば、いぶし出そうと、開口部の外で火を燃やした。ほかにも逃げ口があったのか、テンは出てこず、諦めて帰宅した。火は消したつもりだったが、空洞内に移っていたのだろう。翌日、大杉が燃えていた。(先達のすごい巨樹サイトさんより拝借)」
 
 樹の中で火を焚くんじゃねえよ(当たり前だろうが)、という教訓ですね。
 神社を挟むようにそびえ立つ老巨樹……そういう絵面になっていれば、大抵の人にも「見劣りする」などと言われなかったかもしれない。
 まあ、飯盛杉が残ってくれただけでも幸運だと思います。
 おかげで我々は少し正気を取り戻すことができました。
 飯盛杉にお礼を言って、再度あの怪物杉に挑むべく、その場を後にしました。

(またいつでも来るがいい。我々は逃げたりせんし、ずーっとここにいるんだから……)

 振り返ると、静かにそう言っているような気がしました。
 ごもっとも。


fukui1904.jpg

「飯盛杉」
 福井県勝山市北郷町岩屋 岩屋観音
 樹齢:不明(300年以上)
 樹種:スギ
 樹高:35メートル
 幹周:7メートル

>> 2018/06/16 20:35
あぁ、この飯盛杉も空海さんの手によるものでしたか!
空海さんのお行儀問題ですが、これらの伝説はかえって空海さんの本来の偉業&地位を
著しくおとしめているような気もしますね。
現代的にいうと、風評被害みたいな(笑)。
それでも我々巨樹愛好家は、こんな巨樹の基となる行いをしてくださった空海さん、『マジリスペクト!』。
そう思うようにしています(笑)。

そしてこの飯盛杉は、岩屋観音全体のあの雰囲気に相応しいものでした。
むしろあの怪物の直後に見たにもかかわらず、見応えある存在でしたから。
>> 2018/06/16 22:42
本当にウラスギの奥の深さには驚かされます。
もし京都に生えていたら余裕でメインを張れる1本ですよ、これは!
仰るようにもう1本のスギが健在であれば景観として見ても話のネタ的にももっと注目される巨樹になっていたように思えます。何てもったいない。ホント、火の扱いには注意しないとですね…
>> 2018/06/17 22:32
RYO-JIさん>
空海サンらしいですよ!
本当はその霊力を裏付けするエピソードなのでしょうけど、やれご飯を食べる時は左手を添えろだの、おこめつぶを残すなだの、おみそしるをごはんにかけて食べるなだの(おいしい)、くどくど教育された育ちの良い僕としては、空海サン……と、毎回信じられない気持ちです。
もはや真言宗の開祖でも習字の達人でもなく、お箸ぶっ刺す人、みたいな印象になりつつある……。
いかんいかん、そうですよね、彼らの霊力のおかげで巨樹が生まれたのですよね、きっと絶対(雑)。

飯盛杉は順序からしてどうしても後になりますし、そこでも損をしてるとは思います。
しかし、我々の印象にはしっかり残ってますよね。
全体を取りまとめるような古老的存在に思えました。
>> 2018/06/17 22:47
to-fuさん>
幹周囲7メートルということで、もしこれが表杉だと、ここまで面白く撮れないかもな……と思ったりしました。
形がユニークだし、何かしら不思議な感じを抱いてるんですよね……。
こういうのはもちろん茨城にもなく、北陸から新潟にかけての専売特許みたいなもんだと思います。
無数のバリエーションがあるので、同じ杉といえど、訪ねるのが本当に面白いですよね。

うーむ。見たかったですよね……両側に生えていた図を。
せっかく空海サンが刺したのに。それは知らなかったのかな? と。笑
まあ、ひっそり立っているのが性に合っているようにも見えました。
派手なところは岩屋の大杉の方に任せて。








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