2018/07/13//Fri.
巨樹を訪ねる 柏原の大ケヤキ(木の根橋)
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K-1 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 丹波市に入り、今回の兵庫編のシメとなる巨樹に向かいました。
 位置情報もわかりやすく、これまでで最も不安なく訪ねることができるらしい……。
 なんたって町の真ん中にあります。
 「木の根橋」として知られる「柏原の大ケヤキ」です。

 あ、「かしわばら」ではなく「かいばら」。
 変わった読み方をする土地柄だな……と、遠くまで来た感を感じます。

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 樹の立ち姿としてはこのような感じ。
 本当に街中、川のすぐそばに根を張っています。
 幹周囲は6メートルを超えるとあって、なかなかに立派な姿です。
 背後のレトロな町役場の建物とマッチして、風景として美しい。

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 さらに近づいてみる。
 変わった支柱が設置されていますが、緑の茂りは多く、幹はたくましい。
 健康状態は良さそうです。

 しかし、立派ではあるが、ケヤキの6メートル級というのは結構ありふれている。
 この樹がただその大きさのケヤキであるというのなら、わざわざここまでやってきたかどうか、自信がありません。
 兵庫であれば、他にもっと大きい樹もたくさんありますよね。

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 とても大きく発達した根っこ。
 根回りで評価するのであれば、かなりいい線行くのではと思える巨樹です。
 ここが地面! と言い張って無理矢理な位置で測れば、地上1.3メートル地点では根も含んでもっと数値が上がりそう。
 そうやって裏をかいたランカーをいくつも見ましたが(いや、樹は全く悪くない)、その点、この樹の測定は正直なようです。
 それにしてもものすごい根張りだ、と言いながら回り込んで行くと……

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 この奥に、この樹最大の特徴が見えてきますよ。

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 それが、これ。
 長く伸びたケヤキの根が橋と並行して川を横断しているのです。
 その長さ6メートル、まさに「木の根橋」、その名に偽りなしです。

 この姿が昔からよく知られ、県の天然記念物にも指定されている。
 当然書籍などにもよく掲載されていて、ああなるほど変わったケヤキがあるんだなあ……と、当然知識としては仕入れることになるわけです。
 しかし、情報というものはあくまで情報でしかない。
 またもや繰り返しのパターンになってしまうのですが……現地で実物を前にして、これほどまでに迫力あるものだったのか、と感嘆しました。

 かつての柏原藩は、織田信長の弟の織田信包(のぶかね)の統治だったということで、数々の遺構が残る街です。
 ケヤキを撮っていると、川のすぐそばの観光協会からおじさんボランティアチームが出動し、積極的に説明を買って出てくれます。
 この一連の写真を撮るに当たっても常におじさんがそばにおられ(笑)、様々な解説を熱意をもってお話ししてくれています。

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 to-fuさんと交代して、川面から見上げた「木の根橋」。
 おお、これは……なかなかの奇観です。
 書籍の写真ではこんなに強い印象は受けなかったぞ。
 もっと細くて……ああはい、見ようによっては確かに木の根橋ですね、みたいな感じだと想像してたのです。

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 しかし、この木の根橋部分だけでも最大周が3メートル以上もあるとは!
 ケヤキ本体の幹周囲は6メートルですが、この樹が成し遂げたことは9メートル分以上のものが確実にあるでしょう。
 これが幹なのか、根なのか……一体ケヤキは自分で何だと思ってるだろうねえ? とは、ガイドのおじさん談。
 確かにそうですね。
 これは、横に伸びた幹なのかもしれない。
 そう呼んだとしても何の遜色もない立派さです。

 ちなみに、ご覧のように、この部分はコンクリートの橋に支えられていません。
 それ自体で踏ん張っているまぎれもない「橋」であることもすごい。
 
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 再び、川の下を覗き込む。
 根ははるか川床まで下り、思う様水気を吸っています。
 もはや壁状にまで発達した根はすごく堅牢で逞しく、橋ばかりか護岸まで形成している樹と言えるでしょう。

 この樹がこれほどまでになったのも、実は織田家が関係しているとのことです(おじさん解説)。
 織田信包がこの川の工事に関わったそうで(堀の代わりのような意味があったらしい)、その際にこの変わったケヤキのことを知った。
 その時には木造の橋の上を土で覆った、要するに土橋があったのですが、ケヤキはその土橋に沿って根を張ったため、このような格好になっていたらしい。
 殿様はこの樹のことを気に入った。
 樹を伐らずに残したばかりか、一部川の工事の変更して、「木の根橋」という景観を残したのだそうです。

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 この巨樹には、どこか人の心を惹きつけるものがあるのだと思います。
 珍しい格好であるというだけでなく、橋という存在に寄り添うところが、潜在的に意味を感じさせるのかもしれません。
 また、本当にこの柏原の中心部にある点も重要です。
 ガイドおじさんに存分に説明を受け、半ば引っ張っていかれて、観光協会の建物の中に(クーラー涼しい)。

「これがなになにで、これが織田それがしのあれで、これが向こうのあっちで、それから」

 それら歴史関係の資料は、元々関心が薄かったのと、おじさんの説明とメクリスピードが速すぎてあんまり把握できなかったわけなのですけれども……その中の一葉。

「おじさん、これ! これが関心ある! ちょっと最重要、かして!」

 おじさんは、こちらの異様な食いつきに、「お、おう」とちょっと引きつつも、ケヤキについての解説図版を見せてくれました。

 ……何もかもが素晴らしいです。
 何と愛されている樹なのかと、心が暖かくなります。

 まずすごいのは、ケヤキを守るために町役場の建物を一部撤去したという!
 これ、普通は99%逆ですよね。
 大きくなりすぎたケヤキを切らないで、役場を撤去するなんて、聞いたことない……。
 そのあと、ケヤキの傷みを心配して定期検診を行い、治療している。
 目立つ支柱も、ケヤキの形に合わせた完全なオーダーメイドです。
 さらには、根を守るために、道路を橋梁化する工事まで実現している!

 ここまで手を尽くされ、文字通り「柏原のシンボル」として皆が愛している。
 1本の樹のために、ここまでできるものなんだなあ……と、ちょっと感動してしまいました。
 もちろん予算の問題は高い壁として立ちはだかったでしょうが、それをもクリアしてしまった。
 すごい熱量がそこにはあり、今こうして茂る緑は、その結果勝ち取った柏原の誇りの他何物でもないでしょう。
 もちろん、おじさんたちの口調からも、俺たちは願ったことを実現できるんだ、と、そういう自信をびしびし感じ取ることができました。

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 解説文。
 いや、これはもう現地では必要ありません。
 ガイドおじさんの白熱解説を受け、この解説板を20倍くらい上回る素晴らしい手書きの説明を観光協会で見せてもらうことを断然お勧めします。

 そして、この樹には、まだ他にも意味があります。
 この樹の衰弱が目立ってきた1988年、木の根橋を守らなくては! という柏原の声と前述の努力が注目され、「巨木を語ろう全国フォーラム」第一回が、ここ柏原で開催されたのです。
 このフォーラムは現在も毎年日本各地で開催されるまでに成長しており、巨樹を研究し、保護に繋げる重要な運動として認められています。
 つまり、ここから巨樹という存在が世間に再認識されるようになったという、大きな意味を持つ記念樹なのです。

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 巨樹とは、単に数値だけで見るものではなく、その存在自体が文字通り大きいものなのだと実感させてくれたと思います。
 背後には柏原八幡宮があり、その石段から見下ろす景色もまたいい。
 シンボルツリーが町の真ん中にある。
 誰もが知っていて、誰もがわが町の代表だとそれを呼ぶ。
 樹にとっても街にとっても、それはきっとすごく幸福なことなのだと感じました。
 

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「柏原の大ケヤキ(木の根橋)」
 兵庫県丹波市柏原町柏原 
 樹齢:300年以上
 樹種:ケヤキ
 樹高:25メートル
 幹周:6.4メートル
>> 2018/07/13 21:56
ここまで至れり尽くせり大切にされている巨樹も少ないでしょうね。
単に過保護なのではなく、本当に愛されてますね、このケヤキは。
織田さんの頃から、延々とその思いが地元に受け継がれていると思えます。
人と樹との関わり合いが感じられますし、何よりこういう心温まる逸話は聞いていても心地いい。
そんなこんなも含めて見るこのケヤキは、とても見応えがあるでしょうね!
色んなタイプがあって、飽きませんね(笑)。
>> 2018/07/13 23:26
観光資源としてお金のために巨樹が修復されるだけでも有難いことだと思いますが、この街からは収益を度外視してでもとにかく健康になってもらおうという熱意を感じました。下校途中の子供たちの笑顔が非常に印象的で、あの笑顔を見られる街作りが出来ているというだけで充分に費用の元は取れているような気がします。実のところ近畿圏に住んでいながら、巨樹巡りを始めるまで柏原市の存在自体ろくに知らなかったんです。実際訪れてみて、ああ近場にこんな良いところがあったのかと驚きました。

有名なケヤキの巨樹というと空洞化してしまって生命感に欠けるものが多いですが、こうして極限まで人間が手を加えたケヤキの巨樹が遠い将来どのような姿になるのか…自分が生きているうちには確認できそうもないのがちょっと悔しいです。
>> 2018/07/13 23:39
よいお殿様に巡り合えたなぁとしみじみ。
織田信包はよくわからないから調べてみたら。秀吉えげつねえな( ゚Д゚)
>> 2018/07/14 13:46
RYO-JIさん>
ある一定の保護とか、良い印象を持たれているということはまああることだと思いますが、ここまでのケースは初めてでした。
また、天然記念物指定だけ与えて何かの呼び物にされてるケース多い訳ですが、これを見てしまうと、本当に必要なものは何なのか、問い直して欲しくなりますね。

もちろんこのケヤキも観光名所には違いないんですが、街ぐるみの関わり方が非常に心地よいと思いました。
街中にあっても幸福に見えるというのは、開発しないと生きていけない我々人間にとって、尊いことですよね。
>> 2018/07/14 13:54
to-fuさん>
そうですよね、明らかに、「予算があったから活動しました」ということじゃないはずですよね、このケヤキに関しては。
その熱い行動力のおかげで、今の子供達の記憶にも残す事ができた、これは財産だと思います。
維持にも毎回費用はかかるはずですし、大変かとも思いますが、これからも代々大切に守って欲しいです。

それにしても、関東の人間としては兵庫県がどこにあるか地図で書いてみろと言われると困るというレベルにもかかわらず(ふざけてると思われるかもしれませんが、そういう人は多いと思う……一方、関西の人には茨城がどこだかわかるまい)、ほんと、巨樹の導きと言いますか、おかげで柏原の街を知ることができたのも大きな収穫でした。
動かないで、惹きつける。
それを中心に環境と歴史を作る。
すごいなあと思います。
>> 2018/07/14 14:06
さかしたさん>
そういうわけで巨樹で頭がいっぱいになったので、信包サンを入れる隙がなく、ウィキで読んできたんですが。
秀吉に惨殺されたのかしら? と思ったら、なんとか家康時代まで生き延びておられるんですね。母は不明か……。
柏原町には陣屋跡ほか、織田信勝を祀った「織田神社」、信長を祀った「建勲神社(今年復旧されて新品)」など、歴史スポットがいっぱいあるので、積極的なおじさま達に絡まれながらぜひ巡ってみてね!








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