2018/10/20//Sat.
巨樹を訪ねる 温泉神社の大杉
kitakata18024.jpg
K-1 mark2 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 夏の終わりの福島県喜多方市。
 そばの花の盛りを撮りに行った脚で、もちろん巨樹を探訪しないわけには行きません。
 豊かな福島のこと、巨樹的にも見所がたくさんあります。

 喜多方市では……と、熱塩温泉の温泉神社の御神木「温泉神社の大杉」を訪ねてみました。
 強い野性味を感じさせる巨樹です。


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 鄙びた熱塩温泉街のどん詰まり、護法山・示現寺というお寺まで進み、少し戻る感じ。
 温泉宿や住宅がある間に神社の存在を示す印が立てられています。
 道は狭いし駐車場も無いので、お寺の参拝がてらという態でちょっと停めさせてもらいます。
 建物に挟まれた路地を登っていくと、裏山が神社になっています。

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 出現時の「つかみ」は万全に近い。
 石段を登っていくと……ゴゴゴゴ……と擬音でも書き込みたくなるような按配でその存在が露わになってきます。
 参道?には何本もの立派な杉が並んでおり、地面は天然の階段のように根が這い回っていますが、その御神木だけは、他の杉とは似ても似つかない。
 まるで俺こそが神木であると唸りを上げつつ主張するかのごとくです。

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 これが温泉神社の大杉。
 四方八方に湾曲した腕のような大枝を突き出している様は、タイプ的には裏杉のそれでしょう。
 枝が皆上を目指し、掴みかかるかのように伸びているのが特徴的です。
 このせいで、だいぶトゲトゲしい印象を与えてきます。

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 神社の方に進む……つまり杉の横を通ろうとした時、ええっ、と思わず驚いて足を止めてしまいました。
 でかい。
 幹周囲6メートル半ということでしたが、ここから見ると、はるかに大きく感じます。
 10メートルはあるんじゃないかと思わせる大迫力のビジュアルを叩きつけてきます。

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 しかしこれはトリック(とはちょっと違いますが 笑)。
 見る角度を変えてみると、印象がガラリと変わってしまう。
 これ、本当に同じ杉? と訝しんでしまうような……。これがこの杉の個性ですね。
 要は、幅広く厚みが薄いというか、板状に近い形状をしている……もしかしたら合体樹的な要素があるのかも。

 加えて、すぐそばに別の杉が直立しているのにも気づきます。
 枝のいくつかは、いわばこちらの杉の借景でもありました。

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 いや、それにしても、見るべき角度で見た幹は十分に立派で力強く、巨樹好きが喜ぶのに十二分のものがあります。
 いつの計測の数値かわかりませんが、もっと実際は大きいのではないかと思わせてくれました。
 この数値を裏切ってもっとでかい! という展開が一番嬉しい。

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 幹には黒々とした炭化部分があります。
 解説文に出てきますが、これはおよそ100年前の「温泉大火」の飛び火で燃えた跡だそう。
 「大正9年(1920)4月17日、温泉街は大火により消失」と温泉街の紹介にあり、猛烈な火災だったのでしょう。
 でなければ、いくら飛び火とは言えこんな小高いところにある杉までもが燃えることはないはず。
 そんな記憶までも留めつつ生き続けているということを知ると、余計に大杉が力強く見えてきます。

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 傍に立つ別の杉も見ましょう。
 というのも、ちょっとした違和感を感じたからで……見上げてみると、なるほど。
 綺麗に片側にしか枝がついていませんね。

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 今度は根元を見てみる。
 バキバキと凄まじい勢いで成長したかのような樹皮。見た所、こちらの幹の方が樹齢が若そうです。
 そしてこの立ち方……これはひょっとすると別の樹がすぐそばに生えてしまったわけではなく、大杉がもうひとつの幹を創ったということなのではないでしょうか。
 いや、別の樹だったとしても、ここまで根本が連結していれば、もはや一心同体と言っていいはず。

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 この距離で巧みに争いを避けて枝を取り回しているのも、このサブの幹に主幹の意思が通じている証拠なのではないか。そう思いました。
 そういえば、大杉の幹には縦に大きく裂けたような跡もある。
 危機を感じたことで、次世代の幹をスタンバイさせようとしたのかもしれませんね。

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 しかし、幸いながら主幹も健在。
 この豪快な勢いからすれば、焦げ跡や傷跡も新陳代謝の一部と見えてきてしまうくらい。
 この角度から見た枝の分岐、強烈な反り返り、荒々しさと力強さはまさに裏杉のイメージ通り。

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 解説文。
 天然杉であることが書かれており、つまり温泉神社はこの杉の存在を意識して後から建立されたのでしょう。
 周囲の杉並木が直立姿勢なのに対し、この杉だけがこのような荒々しさを見せている。
 周囲の杉は後から表杉を植林したものかもしれません。

 杉の巨樹が見せてくれる醍醐味のひとつ、荒々しく豪快な生命感を存分に味わわせてくれる一本でした。


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「温泉神社の大杉」
 福島県喜多方市熱塩加納町熱塩 温泉神社
 樹齢:不明
 樹種:スギ
 樹高:25メートル
 幹周:6.5メートル
>> 2018/10/20 22:05
この写真を見るだけでも出現シーンの興奮が伝わってきましたよ。臨場感ありますねえ。
根に覆われた地面がまたボスに近付かせまいとする手下が必死に抵抗しているようでストーリー性を感じます。
どことなくあの勝山の「西光寺の大杉」を思い出しましたが、こちらのトゲトゲはあれ以上に不規則ですね。頭上近くの枝にまで青々した葉が残っているのはこの手の大杉としては珍しい。これは充分に個性的で素晴らしいスギですね。この1本のために遠出しても満足できそうです。大火によって焦げた箇所がむしろ風格を増すのに一役買っていてザ・野性!という感じで格好良い。
>> 2018/10/21 10:07
to-fuさん>
ここは良かったですね。おおっ、お出ましだな! と叫んでました。
ひとつの見せ場、醍醐味です。
こうなってしまうと、普通に見れば十分大木と呼べる杉たちも、単に従僕というか子分のようにしか見えませんよね。

そう、僕も「西光寺の大杉」を連想しました。
おそらく御神木として枝を切られていないと、こういう樹形になるのかもしれません。
しかし、こちらは傷だらけ、しかも上へ上へ反り返っているというところが、並べて見たとすると差として出てくるところですね。
プリントしてアルバムに入れる際に、この両者を隣同士にしたら壮観かもしれません。
解説文にもありますが、樹勢はいいですね。
まだまだやる気を感じさせてくれるような、ポジティブでたくましい巨樹でした。
>> 2018/10/22 23:00
記事を読み進めながら、狛さんの心情がよーく伝わってきます。
これはアレですね、控え目に言って素晴らしい杉ですね(笑)。

植物なのに動物を連想させる野性味ある杉。
自分で言ってて恥ずかしいんですが、マンモスを連想するんですよね、こういう裏杉は。
サイズは杉の中では凡庸ですが、見た目から感じる印象は強烈。
火災の跡もある意味勲章で、手負いのマンモスって感じです。
いや、ほんと、何言ってるんでしょう(笑)。
でもね、これだから巨樹は面白いなぁと感じます。

>> 2018/10/23 18:57
RYO-JIさん>
ありがとうございます、そう言ってくれれば、訪ねて記事にした甲斐もあります。
美しい姿ではないながらも、そこがまた良さになっていると思いますね。
マンモス……そうなんですよね、僕もそういう風に思う時があります。
岐阜のおヒノキ様はクマっぽいなと思ってしまいましたが。笑

この幅広くて薄いフォルムはどうしたんでしょうね、やはり傾斜なのか……。
ぜひ真横から見て欲しい! と、ちょうど一番見やすい位置なので、杉自身狙ったのかも? 笑
巨樹経験の浅い方をびっくりさせるのにぴったりな逸材かもしれません。
僕も相当楽しませてもらいました。うん、いい杉です。








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