2018/11/05//Mon.
巨樹を訪ねる 双葉のミズナラ
hokkaido1879.jpg
K-1 mark2 / HD PENTAX-D FA 28-105mmF3.5-5.6ED DC WR

 阿寒から約1時間ほど北上した津別町は、林業が盛んな森の町。
 そこに、全国的にも有数の巨大なミズナラがあると知って、早朝出かけて行きました。 
 「双葉のミズナラ」です。


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 一面の落ち葉、草むら、ぬかるむ深い水たまりの林道を登り進むこと4キロ。
 そういう道中の有様は後に書くとしまして……とりあえずは行き止まりまで進んだところで案内板を見つけ、ホッとしました。
 車を降り、案内板から視線をあげる。
 すると、斜面の上方ど真ん中の奥に、自然と意識が吸い寄せられました。
 距離があってもすぐにそれだと感じ取れる、明らかに雰囲気を異とする樹がある。
 ここまでの運転で憔悴していたのも忘れて駆け寄りました。

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 大きい。
 これが「双葉のミズナラ」。
 昭和61年、この道有林で偶然発見された樹なのだそうです。
 6メートルを超える幹周囲はミズナラとしては稀な大きさであり、北海道でも第3位のミズナラとのこと。
 全樹種中でも、おそらく北海道中6番手につけているはずです。

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 ちなみに、資料上日本最大のミズナラは長野の山奥の「小黒川のミズナラ」
 しかし、この樹の幹周9.4メートルというのは少々大げさ……というか、測定箇所が難しいのかもしれませんが、実際に見たところ7.5メートル前後で落ち着くと思われます。
 さらに資料を読んだところ、それ以下にも大きな個体が続きますが、ほとんどの樹に固有名がつけられておらず、空白になっている。
 これは、ミズナラの巨樹が総じて標高が高く山深い場所にあるからではないかと思われます。
 数ある樹種中でも調査が進んでいない樹種なのではないかという印象を受けました。
 そこから考えてみても、この「双葉のミズナラ」の大きさと貴重さがよくわかるというものです。

 (ちなみに、高橋弘氏が実測した最新と言える数値では、「双葉のミズナラ」は目通り幹周6.66メートルだったそうです)

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 いやいや、数値上の話はそれほど詰める必要もないのです。
 たとえそれが全然頭に入っていなかったにせよ、前に立てば、この樹の素晴らしさはストレートに伝わってくるはず。
 単純に、すごく美しい樹だと思ったのです。

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 過酷な自然環境の中で気が遠くなるような年月生きてきたことが、樹皮などの表情から読み取ることができます。
 折れている枝もあり、うろもある。
 しかし、それでなお立ち姿が実に凛としているのです。
 千年を超える生の重々しさよりも、透明感や清らかさのようなものを先に感じるようなところがある。
 こういった印象こそ、アイヌの人たちが聖なるものとして崇拝する源なのかもしれませんね。

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 立地としても全くそんな感じですが、周囲の木々を従える森の代表のような存在感に満ちています。
 山の黄葉も、この樹の合図で始まっているのではないか……。
 梢のざわめきと鳥の鳴き声しか聞こえない山の中にいると、そんな大きな意思の存在を感じずにはいられません。

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 しかし、これだけ山中に踏み込んでいるからには、そりゃあクマが怖いわけです。
 が、クマ鈴をチリチリ鳴らすにとどまらず、自然と興奮して声をあげたり、色々独り言を口走ったりしていました。
 クマさんとしても、こういう変な奴には近寄りたくないと思ったでしょう。

 深い雪の重圧で枝が折れ、スクリューのようにねじくれているところもある。
 ゴツゴツした主幹をよく観察してみると、だいぶ下の方でも大きな枝折れがあったことが見て取れ、何度も何度も、折れては育ちを繰り返したことが伺えます。

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 しかし、今もなお弱っているようには見えない。
 鮮やかに色づいている葉も多く、リアルタイムで生きているぞ! というその姿は頼もしい。
 ミズナラがつけるどんぐりは野生動物の重要な食料です。
 人よりも動物たちがこの巨樹を目印にし、頼り、尊敬しているのだろうと思います。

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 やはり、大きく腕を広げたようなこの立ち姿がとてもいい。
 ごく単純に、この極寒の山中で千年生きたことによってこうなったのだという、無垢さ、混じり気のなさが感じられます。
 人の生活との結びつきは皆無なので、文化的背景や周辺環境などを持ち合わせず、今のところ天然記念物指定もない。
 しかし、それら抜きでも、間違いなく素晴らしい樹だと思いました。

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 ただただこの樹を見て撮るのが楽しく、45分が経過していました。
 自分の住み処からものすごく遠い、この北の地。
 もう一度は来れないのかもしれない……そう考えると、去らねばならないことを名残惜しく思いました。

 ありがとう、末長くお達者で。
 思い切ってそう口に出して一礼し、その場を後にしました。


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 「双葉のミズナラ」
 北海道網走郡津別町字双葉
 樹齢:推定1200年
 樹種:ミズナラ
 樹高:21メートル
 幹周:6.4メートル

>> 2018/11/06 20:38
ミズナラ。これまた馴染みのない巨樹だと思って調べてみると、やはりランカーは寒冷地の高原に生えているものが目立ちますね。縁が無いわけです。

奔放に枝を伸ばす様がいいですねえ。人の手が加わっていることが前提のこちらの巨樹とは全く別の生物のようです。どうも人と自然との付き合い方が本州サイドとは根本的に違うみたいですね。そう考えると広大な土地が広がる北海道なのに全国ランカークラスの巨樹の名を聞かないというのも納得できる気がします。ランカークラスは人の支えのもと満身創痍で生きているものが目立ちますが、北海道ではあのような延命措置は前提に無いのでしょう。

それにしてもスギが植林された山道ばかり見ている者としては、この光景だけで感動ですよ。美しい。
>> 2018/11/06 21:59
黄葉していることを差っ引いても、なんとも美しい森ですね。
このミズナラが存在しているからこそでしょうけど、北海道ならではとも思えます。
こんな美しい森ですから、仮にクマが出てきても爽やかに挨拶して静かに通り過ぎていきそう(笑)。

巨樹というのは、そのサイズ感や荒々しさ、樹齢から自然と男性的なイメージを重ねて見てしまいますが、
このミズナラは明らかにしなやかな女性的なイメージです。
写真でさえはっきりそう感じますから、実物はもっとその思いを強く感じる姿形でしょうね。

まさに一期一会の巨樹ですね!
>> 2018/11/07 09:44
to-fuさん>
コナラなどと比べて、ミズナラは標高が高いところに生育する種類だそうですね。
阿寒湖畔にはミズナラの純林もありましたが、今となってはかなり珍しいそうで。

おっしゃる通りで、北海道では、樹に対する接し方がだいぶ異なるのだと感じました。
同じ日本だろ、と思って行くと(いや、実際そうなんですが)軽く衝撃を受けることがいくつも出てきて、徐々に異国感が高まるような感じ。
日本領の外国だと言った方が風土的には正しいのかもしれません。笑
自然は自然、人は人という感じ。
もちろん自然を利用し感謝して生きるのですが、それに負けないように踏ん張らないといけない。
その違いが本州よりも微妙に大きく、巨樹への対し方にも現れる。
そして微妙だったそれが極寒の冬の間に拡大されるのだろうと感じました。

しかし、それを改めて欲しいとは思わず、それこそが北海道らしいと思います。
厳しさがあるからこそ、そこに現れる美しさはすごく眩しいのだと感じました。
そこが北海道の魅力でしょうね。
>> 2018/11/07 09:54
RYO-JIさん>
シラカバやミズナラの林は色彩豊かで明るく、つい楽しくなって写真をたくさん撮ってしまいました。
知らないだけで本州にも大きなミズナラもあるにはあるんですが、やはりこの樹は北海道でしかあり得ない何かを持っていると感じました。
そうですね、どちらかというと女性的。
そして神様というよりはやはり「樹」なのだと思います。
いろいろな巨樹の存在感がありますが、この樹はそんな感じ。
一つの生命としてこの山の中に、他の樹や動物と一緒に存在し続けているという感じを強く受けます。

目の前にすると、しかしやはり巨大。
他の樹とは絶対的に違うものを持ち合わせるに至っているとも感じます。
僕が見つけたわけではないですが、山の中でこういうものに「出会えた」という感じも巨樹探訪の魅力ですよね。








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